「お。あったあった」



生徒会室に戻った俺は黒井から言われた書類を探しだし、最後の確認をした後直ぐに判子を押した。と、物凄い勢いでタイピングをしていた翼が気付き横から覗いてくる。お前何回も聞くけど本当に不良なのか。

「どうしたんです、それ。風紀?」
「あぁ、早く出せって催促されてな。ちょっと行ってくる、すぐ戻っから」
「急がないで良いですよ」

翼の声を背中に聞きながら、帰ってきたばかりの生徒会室から再び出る。またアイツに会うのは非常に気が進まないが、仕方がない。これ以上翼に負担をかけたくは無い。
風紀委員長こと黒井誠人は、恐らく俺の事が嫌いだ。いや、正確に言うならば生徒会の事が。
そりゃそうだろう、学園内で問題が起きる場合、大半が生徒会もしくはその親衛隊に関わってくる。良い印象を持っている筈がない。真面目チャンだしな。

そんな事を考えながら早足で歩いていれば、風紀委員室に着いた。無造作にその扉を叩くと中から無愛想な「開いている」という声。そんなんだから1年にビビられんだ。
入るぞ、と軽く断ってから扉を押し開けると、黒井が一人で机に向かい仕事をしてた。ちらりと俺を見ると再び視線を下に戻し、無言で右手を差し出してくる。…何だその態度。
少しムッとしたが俺は何も言わず、奴の手にお望みのもんをパサッと乗せてやった。受け取った黒井はそれに目も通さず、直ぐに横に放りやる。テメェさっきから喧嘩売ってやがんのか。とは面倒くさい事になるから口に出さない俺。偉い。

「………そんじゃあ、」
「待て」

気分を害した。さっさと出よう。そう思い帰る、と口に出そうとした瞬間短く引き止められ、俺は眉間に皺を寄せて振り返った。早く戻んねぇといけないんだが…何の用なんだ。
黒井はカタン、と椅子を引いて立ち上がると、目の前までスタスタと歩いて来てジッと俺を見つめる。…居心地が悪いこと限りねぇ、何だってんだ。
睨み返す様に相手を見ると、黒井はボソッと、小さく呟いた。


「…随分と、忙しい様だな?」


「………」
…アレか、これは嫌味か。どうせこの寝不足気味な顔は俺が朝から晩までセックスに励んでるからとでも思ってんだろうよ。下半身ゆるゆる会長の認識はどうやったら改められんだ?誰か教えろ。
否定するのも面倒で、マアネーなんて適当な言葉を返したら相手は眉を顰めた。嫌な顔をする位ならはじめから聞かなきゃ良いだろうが。
これ以上相手にするのもタルい、さっさと出る、これがベスト。

「じゃあな、お察しの通り俺様はイソガシイんだ。帰らし、――…ッ!?」

ヒラヒラ手を振って出ていこうと黒井に背中を向けた矢先、突然腕を掴まれ壁に乱暴に押し付けられた。は、何だこれうぜぇ!!!
細い様に見えてその実結構しっかりした筋肉を付けている黒井の手を振り払う事は出来ない。
盛大に舌打ちをしながら奴を睨み付ければ、不意に彼の瞳が揺れた。眉間に皺を寄せ、何だか―――何かを、心配している様な目。………もう、こいつが何を考えてるのか俺には分からん。
怒鳴り付けようかと思っていたがその目に妙に気を削がれ、抵抗する力を弱めた。そうは言ってもこの状態を放っておくわけにもいかず、溜め息混じりに口を開く。

「なんだよ…離せ、いてぇ」
「力が弱いな」
「ああ?うるせぇよ、何なん――」
「何時もならもっと暴れるだろう?」




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