何でうちの学校はこうも行事が多いのか、誰か20文字以内で説明しろ。否、時間の無駄だやっぱり却下。とりあえず何でも良いから今はどこでもドアが欲しい。



廊下を全力疾走しながら、俺はそう喚きたい気分だった。生徒の影がまばらな事は不幸中の幸いだ。会長のこんな姿を見られたら一日でよく分からん噂が流れる。


あの役員が出ていった日以来、生徒会室には俺と翼、それとたまに俺の親衛隊隊長が顔を出すだけになった。どうやら申し訳程度にやっていた一日書類一枚処理〜なんて事も遂に放棄したらしい。手に負えない。
間近に学年交流会が迫っていると言うのに役員を説得する時間も無いまま、俺と翼で手分けして仕事をこなしている状態だ。とは言っても会議があれば出なきゃいけないのはちゃんとした生徒会役員な訳で、他の奴等が全く使えない今、俺が行くしかない。

そういう事で廊下を駆ける俺の心情を理解してくれただろうか。
ちなみに現在、15時14分。非常に不味い、14分も遅れている。俺が居なきゃ会議は始まらない、クソッあのうざってぇ風紀委員に絡まれなきゃいいが…いや、それは無理な話か。

やっとこさ目的の教室に着き、息を整える間もなく急いで扉を開けた。びっくりした様な視線が俺に注がれる―――いや、一つだけ冷ややかなものがあるな。腕を組みながらこちらを見てくる眼鏡野郎。
片眉を上げ、彼は冷めきった声で俺に向かって吐き出した。


「17分の遅刻だな。生徒会長様は余程のんびり屋と見える」
「…ッ…は…悪、ィ」


嫌味たっぷりな言葉に苛ついたが、実際遅れたのは俺だ。言い返す事は出来ない。乱れる息を何とか整えようとしながらとりあえず謝れば、彼――風紀委員長である黒井誠人は、興味を無くした様に俺から視線を外した。…相変わらず失礼な奴だ。
勧められた席に腰を下ろした瞬間、会議は始まった。確認事項の様なものが多いが、高等部だけとは言え全学年での交流会だ。何かと問題は起こりやすい。念入りにチェックする必要があった。






「――では、案件は以上の話し合いをまとめます。会長、宜しいですか?」
「あぁ。頼む」
「それでは会議を終わります。お疲れ様でした」

会議は多少言い合いにもなったりしたが、結局1時間程で終わった。進行役を務めていた緑化委員長が終了を言い渡すと、ガヤガヤと音をたて皆帰る準備をしだす。
俺も早く生徒会室に帰らねぇとな…処理しなきゃならない書類がまだ腐る程ある。
そう思いながらファイルを整え椅子から立ち上がると、目の前に誰かが立った。目線を上げると、何やら不機嫌な様子の風紀委員長。咄嗟に嫌な顔を出さなかった俺を誰か褒めろ。

「………、何だよ?」
「明日期限の書類があった筈だがまだそちらから回ってこない、何をしているんだ」
「あし……あ、あぁ、アレか。悪い、…後で届けに行く」

言われた言葉に頭をフル回転させ、該当する書類を思い出す。確かあれは後判子を押せば終わりだった筈だ。
黒井は軽く頷き、早くしてくれと言い残し踵を返した。去り際に何だか睨まれた気がするのは気のせいか?




残された俺は一人溜め息をつき、今度こそその場から離れた。






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