ワンピ短編 | ナノ
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▼ 今も笑ってくれるだろうか

「おやカタクリ、噂はもう聞いたかい?」
「何の話だ?」
「我らが長男の結婚が決まったそうだよ」
「…!本当か!」
「本当だとも。しかも相手はあのパイチェ、ママは大喜びさ」

ぺロス兄が結婚すれば次はおれだ。いや、寧ろもうママはおれの結婚相手を選び始めているだろう。ならば出来るだけ早く、寧ろ今すぐにでもママに自分の意思を伝えるべきだ。勢力拡大というには堅実な相手ではあるが、候補としては充分範囲内だ。

ママと義父たちを見てきたカタクリには一般的な結婚や夫婦は分からない。しかし、これから自分の家族になる女をと考えた時に、頭に浮かんだのはこの忌わしい口をあまつさえ可愛いと称したあの笑顔だった。彼女は今もまだ、この醜い牙を見ても、間の抜けた姿を晒しても、かわいいなどと笑ってくれるのだろうか。

結局あの時の子どもはちゃんと約束を守れたようで、カタクリが口を封さずに済んだ。ここ数年は会っていないが屈託のない幼い笑顔を浮かべる彼女も今はもう年頃になっているだろう。

カタクリは女王の間へと入る。

「ママ、話したい事がある」



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