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▼ シャルロ…?どなたでしょうか?

ぷるぷるぷるぷる…がちゃ

新世界のとある諸島のとある島の丘の上。そこに建つ小さな店では3人の店員が忙しなく動いていた。今日も店は賑わっている。店主のタッセは裏で商品を袋に詰めながら受話器を取る。

「もしも…『タッセ〜?あんた一体何やらかした訳?』

てっきり注文か、問屋からかと思ってとった電話は実家の姉からだった。珍しい所の話ではない。この島に移り住んでもう何年にもなるが、実家から、しかも店の方にまで電話がかかってきた事なんて両手の指の数程もない。

「…これ店の電話なんだけど…」
『知ってる。それ相応に緊急かつ重要な案件だからわざわざかけてんの』
「…ちょっと待ってて」

ニルギリに包み終わった品の受け渡しを、しらおれに表の接客を一時任せて、奥のデスクに腰掛ける。放任主義の我が家でわざわざ別の島に住む末妹にまで連絡をよこさねばならないとは一体何の用なのだろうか。一つ息を付いてから通話を再開する。

「OK…何事なの?」

まさか経営が上手く行ってなくて、建て直しの為に帰ってきなさい…なんて事では無いだろうな…まぁそこまで危ういなら先に噂の一つ二つ入ってきそうなものだからないだろうけど…などと勘ぐっていたタッセの予想は裏切られる事になる。

『あんたに縁談が来たわ。相手は大海賊“ビッグ・マム”の10男。本当にどこでこんな大物と接点持ったのよ。割とてんやわんやよこっち』

エンダン

えんだん…

縁談…ビッグ・マムの…10男と…?


「………………はい?」
「はい?じゃないからね」

相手が相手だけに喜べないというものあるが、姉の声は内容の割に平坦としている。それもあって理解が遅れた。

縁談?うちに?私に?海賊から?というか10男って多すぎでは?男ばかりの兄弟…?

何故…?

確かに私は結婚適齢期と言われていい歳だ。しかしこの狭い島に移り住んでもう何年にもなる。むしろ私の存在なんてよく覚えられていたものだと思う。実家はそこそこ商売が繁盛しているし、兄姉になら利権絡みを含んだ縁談が持ち上がるのも分かる。なのに未婚の兄姉を差し置いて私とは。しかも相手は海賊と来た。海賊がうちみたいな雑貨商売と縁を結びたがる意味とは?世情に疎い私でも『ビッグ・マム』の名前ぐらいは何となくは聞いた事がある大物だ。うちを隠れ蓑に裏取引でも行いたいのだろうか……

ぐるぐると思考がまとまらない。というか疑問符しか浮かばない。どこで接点を持ったか?そんなのこっちが知りたい。

考え込んでいる妹の顔を見て、埒が明かないと思ったのだろう。電伝虫がため息をついてて言い放つ。

「兎に角タッセも一度帰ってきな。使者様に帰ってもらうにも話進まないのよ。無理を言って連絡船出して貰うからそれに乗りなさい」

がちゃ、と電伝虫が鳴いて口を閉じる。一方的に切られてしまったが実際行くしか無いのだろう。ゆっくり受話器を戻して両腕の肘をついて顔を覆う。壁ひとつ先では賑やかな声が交わされている筈なのに遠く聞こえる。

「ビッグ・ママの何男とか知らないし…!!」

知らない男の嫁になんて、行きたくない。



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