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▼ サプライズというにはあまりにささやかで

その日は祭りだった。

この島を治める大臣であり王子たるクラッカーの誕生日。それを祝して各店ではフェアが行われ、賑やかさを一層増している。クラッカーの住まう屋敷には彼を慕う島民、部下、仲の良い兄弟からの贈り物が届いていた。中には直接渡したいと反対サイドの島から駆けつけて来た者までいる。

しかしその祭りの主役たるクラッカーは苛立ちも隠さずせかせかと屋敷の廊下を歩いていた。

前日から日付が変わった瞬間にアクションがあるかと思っていたが何も無く、朝起きても顔さえ会わさず彼女はどこかに出かけて行った。それからのクラッカーは会いに来てくれた兄弟姉妹や国の有力者と会い、と午前を過ごした。その間に帰ってきたという報告は無し。寧ろ昼を過ぎても報告はきりゃしない。

もう今日の半分も過ぎた。なのにあいつは何故何もしない!!何故顔さえ見せない!!まさか今日が何の日か知らない訳でもあるまいに…それともあいつの故郷では誕生日を祝う習慣はないのか…?それにしてもこれはない。この島、この国じゃあ誕生日は盛大に祝うものだ!!

バンッッッッ、と自室のドアが開くのも待たずに苛立ちのままに開くと、そこには今日ずっと考えていた彼女、タッセが全く悪びれた様子もなく、微笑みながら立っていた。

その姿に安堵したような、やはり苛つくような。

「こんにちはですね、クラッカーさん。おやつはご一緒出来ますか?」
「その前に何か言うことがあるだろう」
「…そうですね、誕生日おめでとうございます」

一先ず苛立ちに歯止めのかかったクラッカーは椅子に着く。タッセが万国に来てからも極力おやつは一緒に摂ると暗黙のうちに決まっていた。寧ろこの場にいなかったら流石に呼出し捜索をかけていただろう。いつもおやつを食べるテーブルの上に置かれたプレゼントの包装を解く。割合と大きなそれから出てきたのは銀製のケーキスタンドだった。

「もしかして誰かと被ってしまいましたかね…?」
「いや…」

良い品だ。単純に一目見てクラッカーはそう思った。

大型のお菓子を作るクラッカーに合わせて一段一段が高く、また段数も多い。重心が上に来てしまうとと安定しづらくなるが、野暮になること無く下部を重くするデザインは感心する物がある。一見すると機能性だけを考えた作りのようにも見えるが、よく見ると柱には精緻な彫刻が施されており、主役の邪魔しないのも素晴らしい。

不安げな表情を浮かべるタッセに対して真剣な表情でスタンドを見るクラッカーは一頻り眺めた後にタッセに笑いかけた。

「気に入った」
「なら良かったです」

安心したタッセは、今日のおやつは皆さんからいただいたプレゼントのお菓子で良いですか?と皿の用意を始める。早速役目を果たしたスタンドは多種多様のスイーツを乗せて今、やっとその美しさを完成された。



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