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▼ マリーゴールドの花言葉

「レモンバームでございます。ごゆっくりどうぞ」
「ありがとう」

アイスティーを出してテーブルに伝票を置き、一礼して離れる。

「ニルギリちゃーん!カレンデュラとお菓子ひと袋頂戴な」
「はい。そのままで?それともティーバッグにしますか?」
「そのままで大丈夫よ。50gお願いね」
「只今用意しますので少々お待ち下さい」

好きな物に囲まれた馴れた仕事。まだまだ頼る事の多い先輩と、半人前同士の同僚と一緒に働いている。
今日は昨日の雨の反動かそれなりに忙しい。1度バックヤードに入り、ハーブティの棚からカレンデュラの花弁を取り出し50gを測りとる。すると残りはもう僅かになった。

ちらりと棚の間から横目で談笑しながら『午前のおやつ』を楽しむ2人を見る。そこのテーブルにあったのもカレンデュラ。だから消費が激しかったのか。

持参の瓶に花弁を詰めて封をして、既にラッピング済みのお菓子と共に紙袋にいれて渡す。それが終われば在庫表の書き込みと新しい瓶の準備。向かいの棚では同じようにしらおれが抹茶の準備をしている。

「なぁしら」
「どうしたの?ニル」
「あのタッセさんとあの人、段々仲良くなってないか」
「…かもしれない。あんな怖い人とよく普通に話せるよね」
「…だな」

昨日、おれが抜け出した後に何かあったのだろうか。残った方が良かったのだろうか。しかしやはりおれだって関わりたくない。あんな得体の知れない人物となんて。

タッセさんの髪は摘み時の葉の色、瞳の色は覗き込んだ紅茶のカップ。常に何か緑の香りを纏わせる、この店自体のような人。

そこに最近磯と砂糖の臭いが混じるようになった。その隣に目に痛い紫とピンクがあるようになった。

偶然客の途切れ目でカウンターに2人になった。丁度良いので、自分よりも高い所にある顔を見つめて話を切り出す。

「タッセさん、あの人何者なんでしょうか」
「…どうしたの?」
「十中八九海賊、もしくは賞金稼ぎ、そうでないにしても確実に荒れくれ者、でしょう?」
「そうかもねー…」

タッセさんは苦笑いを浮かべる。その顔を見て嫌な予感がしたのは気の所為だと思いたい。

「悪いようにはならない。だから安心して」
「勘、ですか?」
「まあね」

この人の勘は大体当たる。だからあの男はこちらに害を成す事はほぼ無いのだろう。だがそうじゃない。問題はそこではない。
あの男とおれたちでは何もかもが違い過ぎる。今ならまだまだ間に合うだろう、この人は興味のある物とそうでない物の差が余りに激しい。どうしようもない差違に絶望する必要は無く、決まっている別れを悲しむ必要なんてない。

一種の嫉妬である自覚はある。タッセさんはおれたちの先輩で、まだおれたちさえ得ることの出来ていない立場をたった数日前にやってた男が掻っ攫っいかけているのだから。



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