▼ 砂浜にビビットピンク
東から厳しい程の日差しが差して遮る雲はない。程よい陽気の中、特にこれといったものもない海沿いをタッセは特に行く当てもなく歩いていた。
靴が砂浜に沈むのを楽しみながら、若葉色の髪が時折吹く風に舞う。ゆったりと和やかに散歩をしていたタッセは、浜辺に何かが打ち上げられているのに気づいた。遠目でも目に入る大きな何か、 さらに言えばそれは凡そ自然物とは考え難いビビットピンク。
不審に思い駆け寄る。それはピンクのマントを着けた筋肉質な男だった。丁度波打ち際に打ち上げられたようでぐったりと伏している。
タッセはその男の口元に手を翳すと呼吸を感じた。つまり死体ではないらしい。どうしようかと暫く逡巡したが、意識の無い男の身体をなんとかずらして背負う。
筋肉質な男を細身の女が背負おう。すると当然の事ではあるがタッセはほとんど潰れかける事となった。そしてそのまま家への1歩を踏み出した。
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