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▼ 特例

昼休憩返上で出ていったタッセをバックヤードに居たしらおれとクラッカーが見送る。お菓子作りも今は待ち時間でクラッカーは手持ち無沙汰に居合わせた女に視線を落とす。

「あ、の、何か…?」

怯えながらも一応反応されたが別に特に用もない。そこでタイミング良く赤ん坊がぐずり出したので抱えて揺らしてやる。

「…てっきりあいつはこいつを育てるだとか、そうでなくてももう暫く預かるぐらいはするだろうと踏んでいた」
「そうですかね…?タッセさんは、なんというか、手に負えない厄介を自分で抱え込むような人ではありませんよ…?」
「見ず知らずの男を拾ってくるようなお人好しがか?」

半ば独り言のように言葉を投げると意外にも怯えながらも答えを返された。

「、……逆、で私たちも驚いたんですよ。タッセさんは私達が店、先代の店長に拾われた時も最初は渋りましたし」
「…」

クラッカーは目を見開いた。自分を拾った女は飛んだお人好しだと思っていたがそうではなかったらしい。あの時に何があったかなどクラッカーは知る由もない。しかし事実として自分は最初から彼女の内に入る事を許された。それに気づくと同時に湧き出た優越感。しかしそれもすぐに消える。だからなんだと言うのか。

「おーい、しらおれ…何してんだ。サボんな」
「ご、ごめん!今行く!」

赤ん坊の泣き声をBGMにクラッカーは1人ただ立っていた。



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