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▼ 馬鹿は褒め言葉

午後いっぱいは新芽が香り出す1面の茶畑での作業だった。タッセは生き生きとしかし真剣に植木の列の間を歩いては作業をしていた。対照的にクラッカーは果樹と比べると華に欠ける茶畑にそこまでの魅力は感じられず、そこそこの時間を昼寝に充てることとなった。朝彼女が言ったように帰ったのは夕飯前の時間だった。


帰って夕食を済ませ、シャワーも済ませたクラッカーは明日の店の予定を確認しようとタッセの私室を訪ねた。

しかしそこに部屋主の姿はなく、見聞色の覇気で気配を探ると入ったことのない奥の部屋から気配がする。入るとそこは書斎のようで、タッセはそこで書き物をしていた。

「おい…おい!」
「わっ…!!ああ、クラッカーさんでしたか、すみません。何か御用ですか?」

なんとなしに彼女の後ろに立ち、机の上を覗けば植物図鑑が数冊と日誌らしき物が見えた。この為にこの部屋にいたらしい。

結局こいつは今日1日を休んでいない。確かに店自体は休みではあるが、店の為の農園管理なんて仕事の内だ。今だって集中して書き物をしていたから好きでやっているのだろう。

本物の茶馬鹿だな

クラッカーは内心で笑みを浮かべる。もしクラッカーがママや兄姉に『ビスケット馬鹿』と称されたなら寧ろそれは名誉な事だ。故に目の前の女に親近感に近いものを抱ける。

「明日の店は?」
「いつも通りに開きます。私は早番なので先に出ますけど、クラッカーさんは今まで通りに来ていただければ」
「ああ、そうする」

さて、明日もこいつの茶に合わせるに余るお菓子を作ってやるとしよう。



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