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▼ 『もぎたて』って美味しそう

「今の時期だとやっぱりオレンジと苺が旬ですねー」

そう言いながらもタッセクラッカーの方を向きしない。店の制服ではなくオーバーオールを着た彼女は木の股に座って葉の様子を確認してはメモを取っている。実を付けていない木では正確に何の木なのかクラッカーにはわからないが、何となく今までの流れからして1つ前に登った木とは別物なのだろう。メモを取り登っては降りて、時々何かの液をかけ、虫を取り、ごく稀に収穫する姿は真剣そのものだ。

クラッカーがまだ子供だった頃に姉のコンポートに連れられて姉自慢の果樹園を見に行った事はあるが、逆に言えばそれっきりだった。その果樹園は種類も量もかなり豊富で、当時からすると同じ景色が延々と続いて、しかもつまみ食いも禁止ときたものだから至極つまらなかったのを憶えている。流石に当時程餓鬼ではないし、種類は豊富でも同じ木は殆どないせいか一足進める事に景色が変わり飽きもこないので地味だが中々に面白い。

ちょうど目の前にあったオレンジが鮮やかで美味そうに見えたクラッカーはそれをもぎ、携帯ナイフで手早く皮を剥いで果実を口にした。ジャムにした時にこの島の果実が美味であることは分かっている。

「あ、それはまだ、」
「……!?酸っぺぇ…!!なんだこれは…!!」
「…柑橘系は基本もぎたてよりも少し置いた方が甘みが増すんですよ」

果肉の匂いで気づいたタッセが止めようとしたが既に遅く、タッセは苦笑しながら木から降りてクラッカーの元へ行き残りのオレンジと皮を受け取る。

「丁度いい時間ですし今日のおやつは簡単ですけどフルーツにしませんか?近くの保管庫に食べ頃のものがありますから」

タッセは酸味が強くても気にならないらしく苦笑しながらクラッカーの残したそれを食べる。クラッカーが本当だろうなと疑念の視線を投げても、タッセは嘘は付きませんよと苦笑を続けた。


2人は洞窟を利用した冷蔵庫から食べ頃の果物を選び、気の早いカモミールがぽつりぽつりと咲く池の畔でおやつにする。タッセの言う通り適切に寝かせた果物は先程の物とは比べ物にならないくらいに美味であった。

「甘い物が苦手と言う割には果物は食うのか」
「あーー確かに焼き菓子やクリーム菓子と比べるとフルーツのほうが好きかも知れません…それにブレンドティーやお茶請けのドライフルーツにも使いますしね」
「貴様はお茶の事しか考えていないのか」

クラッカーが笑えばタッセもはにかんだ。どうやら茶馬鹿上等らしい。そういえば店の家具や茶器食器に至るまで、多少年季が入った物もあったが全て良い物が使われていた。

「ならば何故茶菓子だけは気が配れない」
「…それは…」
「ハハッ」

本音半分揶揄い半分で指摘してやればすぐ萎縮するのが愉快だ。選択肢が一つしか無かった為に選んだ茶の相手であったが存外こいつは悪くない。



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