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▼ おやつを食べない人間などいたのか?

「これから買い物に行ってきますが何か入り用な物はありますか?」

やはりこの女の危機管理能力は死んでいるのではないだろうか。

とりあえず服一式と夕食の食料と…食器は足りるだろうし、後は……などと呟く姿がクラッカーには奇妙にしか思えない。

「馬鹿か貴様は」
「?どういった意味で…?」

食事の時と同じ表情を浮かべるタッセにクラッカーは怪訝と言わんばかりの感情を隠しもせずに口を開く。

「知人以下の赤の他人1人を残して家を空けるなど、どれだけ目出度い思考をしているのだと聞いているのだ」
「何か問題がありますか?」

タッセの表情には疑問以外なにも浮かんでいない。

「家を空けても何も起こらないでしょう?貴方は奴は家を荒らすような品位のない行動を起こすような人でもなければ、この家には貴方に取っては二束三文以下の家財しかない。寧ろ買い物に同行を頼む立場に私はいないのではと思います」

タッセの目はしっかりとクラッカーの目を見ていて、その視線が何よりもその言葉に嘘がない事を物語っている。

…この短時間で大した観察眼、自覚があるかは知らないが見聞色の覇気も持っているのかもしれない。

それを踏まえても肝が太いと言うべきかやはり馬鹿なのか、クラッカーはもうどうでも良くなった。1つ息を吐いて、今思い出した重要事項について尋ねる。

「…午後のおやつはなんだ」
「おやつ…?」
「おやつはおやつだ。1日5食は基本だろう?」
「5食とは…」
「朝食、午前のおやつ、昼食、午後のおやつ、夕食に決まっているだろう」
「はぁ…」

先程の動じない姿から一変、タッセはばつが悪そうに視線をそらす。

「言っておくがおれはお菓子には煩いぞ?一級品の中の一級品を食べてきているからな」
「私、普段お菓子は食べないので、御眼鏡に叶うことは出来ないとかと…良し悪しが分かりません…」
「…………貴様本気で言っているのか…?」

今日一番表情を苦くしたタッセと今日一番不可解な顔をしたクラッカーだった。



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