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彼の幸せ5

嫉妬。
人類の七つの大罪。
感情。


「あ、おいしい。
沖矢さんこれ義姉さんから教わったレシピですか?」

「えぇ。有希子さんに教わってすこしアレンジしたんです」

「へぇ〜今度教えてください」

「もちろん」

仲良さげに話す想い人と男。
こんなものを見せられればどんな聖人でも醜い感情を持ってしまうものだろう。
まぁ、俺は素より聖人じゃないから持って当然だろう。

なぜだかガキ(コナン)も奴には懐いているようだし、それが更に自分を苛立たせた。
これなら来ない方が良かったかもしれないと思ったところで、見てないところで仲良くされるのも気分が悪いな、と思い直した。

確かに自分はサングラスは常備しているし、人相は悪いし、いつ死ぬかわからない職に就いているし、実際死にかけて美織に救われた。

それに比べこの男はイケメンだわ、穏やかだわ、更に大学院生だわで俺と正反対を体現した男。

でも死にかけた時、やっぱりちゃんと告っておけば、なんて後悔だってした。
したんだが、いざ言葉にするのは難しい。

わかりやすく口説いているにも関わらずスルーするこいつに、もう直接言うしかないと思っていた。

それに合わせての彼女の兄からの助言だ。
素直になれ。

まったくもってその通り。

スプーンを咥え、ため息をついた。

「おや?お口に合いませんでしたか?」

「あ?…いや、別に」

「なに?考え事?」

「…何でもねぇよ…うめぇなこれ。
今度作ってくれや」

「ならボクも美織姉ちゃんが作ったの食べたーい!」

…このガキから素直さを学ぶべきかもしれない。

───────

ドキリとした。

そんなつもりが無いだろうが友人として言われてるように思えなくて、勘違いしそうだ。
何度こう思えばいいのか。

「…考えとく」

「あら!じゃあ美織ちゃん今度私とお料理教室しましょうよ!哀ちゃんや蘭ちゃんに、歩美ちゃん園子ちゃん達も誘って!」

「あー、それ楽しそう。日曜ならいけるかなー…」

「なら日曜日ね!
蘭ちゃん達は私が誘っておくから〜!
あ、松田くんは味見係で強制参加ね?」

語尾にハートが付きそうな勢いで松田へウインクした。

「了解です。ちょうど非番なんで」

「マジか」

右を見ると舌打ちをしそうなほど目付きを悪くした新一が義姉さんを睨んでいた。
母親を睨むな。全く。

私は私ではぁ、と誰にも聞かれない程度にため息をついた。

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