鍵盤と兄と彼と
諸伏美織。
19歳。職業:ヴァイオリニスト、ピアニスト。
兼情報屋。
「の、チケットが取れたのよ!!」
「へぇ〜よく取れたわね!」
「ま、あたしの手腕にかかればこの程度朝飯前よ!」
いつもの如く、ポアロで話しているのは鈴木財閥ご令嬢、鈴木園子。
そしてポアロの上に住まう毛利蘭、居候の江戸川コナンに少年探偵団。
「歩美知ってるよ!
すごいきれいなお姉さん!」
「最近テレビで見ますよね!ヴァイオリニストでピアニストの二刀流!」
「ふふんっ
者共ー!行きたいかー!」
「うめーもん食えるか!?」
「ご飯じゃないですよ元太くん」
「いきたーい!」
「コナンくんも行くでしょ?」
蘭がコナンへ問いかけるが彼は歯切れが悪い様子。
「え、あ〜うん…」
「あれ、コナンくん新一と一緒でヴァイオリン好きだったから興味あると思ってたのに…」
不思議そうな彼女からコナンは目をそらす。
──────この体になる前だったら多分喜んでたろーよ…
チラリとコナンはカウンターで笑顔の安室透とカウンター席に座る笑顔の緑川楓──────降谷零と諸伏景光だ。
「あ、安室さんと緑川さんも行きますか?
まだ枚数あるから大丈夫ですよ!」
「そうだなぁ…いつでしたっけ?」
────まぁ全日程把握しててチケットは確保済みだけどな
「俺たちは大丈夫だよ。
そのコンサートならツテがあってチケットは貰ったんだ」
────お前だけ行かせるわけねぇだろ
「なんだ、緑川確保してくれたのか」
────余計なことを…
「あぁ、そっちで働いてる友人がな」
────まぁ俺は本人からだしお前が貰ったチケットってわけじゃねーけどな
見えない火花がどことなくカウンターを跨ぎ散っているし、なんならポアロの中の室温が下がった気がする。
「なんだ残念!
じゃあ向こうで会いましょうね!」
「えぇ」
……巻き込まれたくねぇなぁ……
コナン、否新一はこの不安を杞憂であることを切に祈っていた。
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