異次元の狙撃手10
翌日
「メール?」
「あぁ」
赤井さんに見せられたパソコン画面には三人の男の名前と年齢と写真。
「FBI本部から送られてきたハンターが連絡を取りそうな人間だ。ジェイムズさんに転送してもらった」
「へぇ…」
マーク・スペンサー 65歳
ケビン吉野 32歳
スコット・グリーン 43歳
「でもこれ、日本警察にも開示して協力要請してるんでしょ?」
「情報共有は基礎だろう?
それとも、君も知っていたか?」
「そんなに私を買い被らないでくださいな」
「なら、念の為他の情報も共有しておこう」
ケビン吉野
元海兵隊二等軍曹、現在は福生でミリタリーショップを経営。独自のルートで米軍払い下げの品を調達し、販売。
スコット・グリーン
元海軍兵曹長、現在は町田でバイク店を経営。
SEALs時代は狙撃スクールの教官であり、ハンターは彼の教え子だった。
そして、マーク・スペンサー
彼はハンターとは直接的な関わりはない。しかし、日本在住の米軍兵の良き相談相手となっている元司令官。交友関係の狭いハンターが頼ってもおかしくはない人物である。
「ホォー…」
「…俺の真似か?」
「まさか!感動詞だよ感動詞!
んじゃ、日本警察がこの人達に事情聴取行ってるってわけね」
「そうだろうな」
「んじゃ、終わった連絡を待とうかねぇ
例に漏れず今回も私はお呼び出しだろうし?」
「相変わらずのご様子で」
フッと笑った赤井さんが口調だけを沖矢さんにしたことで違和感を拭えない。
「…赤井さんか沖矢さんかどっちかにしてくんない?困るわ」
「それは失礼」
───────────
纏めれば、ハンターの交戦規定違反に関しては曖昧だ。
教官であったスコット・グリーンは事実だろうと言い、命を救われたケビン吉野はありえないと言う。
マーク・スペンサーに至っては事実か否かは最早分からない、と言ったそう。
まぁ、現状マーク・スペンサーの意見が一番客観視できているものである。しかし彼は今回の狙撃手がハンターなのであれば、射殺してくれ。なんなら自身の運転手である元狙撃手を貸そうかとまで言ったらしい。
生まれた国が銃社会だからか、将また、軍関係者であったからか幾分か日本には過激な意見だ。
「ふーん…総合すると、まだ分からない、かな」
「一番協力体制を取れそうなケビン吉野のショップにあったMK-11も本物では無かったものね」
「そりゃミリタリーショップにライフル密輸なんてしてたら日本今頃大パニックよ…
正当防衛で相手を射殺するなんて平和ボケしてる日本にゃ無理無理。なんのための警察よ」
「そこを突かれると痛いなぁ…」
苦笑する高木刑事に佐藤刑事は笑ってる場合じゃない!と叱咤した。
「はぁ……ん?」
携帯にいつの間にか新一からメールが届いていた。
『新しい探偵バッジが出来たから取りに来い』
「……命令形かよ」
「どうしたの?」
「いーえ、んじゃ、私ちょっと帰ります。
進展あったら鳴らしてください」
「了解」
電車で米花町へ戻り(先日の暴走で1ヶ月車禁止令が下されたため)歩いて博士の家へ向かう。
ついでにお土産としてお菓子を買って。
夕方頃までなら探偵団が宿題をしているため玄関が空いていると聞いていたのでチャイムを鳴らさず玄関の扉を開けた。
「みんな頑張ってる?」
「あ!美織おねえさんだ!」
「美織おねえさんこんにちは!」
「なんかいい匂いするぞ!」
「元太くんまずは挨拶ですよ全く!」
「みお姉もう来たのか」
「あはは、元太くん鼻が良すぎるわね…
用事から帰ってきたところでね、宿題を頑張る君たちにお土産よ」
ちょっといいところのシュークリームの箱をテーブルに置いてカバンをソファへ投げる。
「わーい!」
「ありがとうございます!」
「食べようぜ!」
「こら小嶋くん。先に手を洗ってからよ」
「わ、分かってるよ!」
子供たちが手を洗いに部屋を出た。
「…で?新作の探偵バッジは?」
「あぁ、これだよ」
「…変わったの?」
「通信感度が良くなったのと、通信ボタンを押すと…」
探偵バッジが光った。
「あら光った。へぇ…何に使うの?」
「まぁ、それは追追じゃよ…」
すると何処と無くニヤニヤする新一が目についた。
「…なによ」
「いいや?みお姉にはもう聞こえねぇのかなって」
「はぁ?」
「そのバッジ、モスキート音が聞こえるのよ」
「あぁ、流石に聞こえてるわよ。失礼ね
モスキート音が聞こえなくなりだすのは20台後半。まぁ若い人にしか聞こえない音が出せるって点ではなにかに役立つかもね」
探偵バッジをポケットへしまった。
「…美織さん」
「どうしたの?」
険しい顔で私の服を引っ張る哀ちゃんは部屋の隅に誘導した。
「工藤君に言っても無駄だからあなたに聞きたいの。
世良真純。彼女、本当に安全なの?私は危険だと思うのだけれど」
「…人間とは、ある一点を見れば安全であり、また別の点見れば危険でもある生き物よ」
「…つまり、なんとも言えないってこと?」
「ご名答。まだ、疑わなくていいと思うわ。
まぁ、あなたたちの正体がバレるか否かにおいてはどうか分からないけれど…」
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