異次元の狙撃手8
「おかえり。美織。
随分無茶したようだね」
「…景光さん…」
中へ入れば彼は玄関で既にスタンバっていた。
「言いたいことはわかるな?」
「…ご、ご心配おかけし誠に申し訳ございませんでした」
目が笑っていないのを確認して勢いよく頭を床に擦りつけるように玄関先で土下座した。
プライド?ンなもんねぇよ!命あっての物種だ!
「うん。分かってるならいいんだ。
今回は犯人追跡のために必要なことだったからね、ただ」
「…?」
頭をあげて彼を見上げれば、片膝をつき、目線を合わされる。
「お前が危ない事をする義務はない。
追跡やら検挙は警察に任せろ」
なんのために俺達がいるんだ、と目を細め頭に手を置かれた。
と、PRRRR...と携帯が音を立てた。
「うおっと…出ても?」
「あぁ」
靴を脱ぎながらカバンに手を入れ携帯を出せば表示は《光彦くん》。
「もしもし?」
彼から電話など珍しい。
普段は新一から直接くるし、と疑問を思いつつ耳に当てた。
『あっ美織お姉さん!いまから博士の家で花火をするんですけど来ませんか?』
「え?花火?」
『はい!…実は、歩美ちゃんがあの現場から元気がなくって元気づけようってことで花火をすることになったんですが博士が水を運ぶ時にぎっくり腰になってしまって…』
動けるは動けるのだが、哀ちゃんが湿布を貼って様子見と言っていたらしく、子供だけで火を扱うのはという話になったそう。
「ん〜…」
ちらり、と周囲に視線をやれば
「俺らが着いてく。
諸伏もそれでいいだろ?」
「一人で夜歩かせるわけに行かないしね。
いくら近くても。行っておいで」
「花火か〜そういや何年もやってねぇなぁ…」
「見ることはあるけどな」
「おっけありがとう。
光彦くん、私と松田さんと萩原さんが行くから、それまで待ってて」
『本当ですか!?ありがとうございます!』
喜んだ彼の声に電話の奥から『美織ねーちゃん来んのか!?』という元太くんの声も聞こえた。
「うん。すぐ行くから準備して待っててね」
『はい!』
と電話を切り、玄関へ向かう。
「じゃあ終わったらそのまま工藤邸戻るから今日はこれで」
「あぁ、気をつけて。
絶対に無茶をするなよ」
いつもの穏やかな景光さんとは違う声に返答はできなかった。
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