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気づけば、背後には多くのギャラリーができていた。
そりゃそうだ。
ブルペンは野晒しで、なんなら金網にも近い。
それにグラウンドにまで最初の騒ぎが聞こえて面白そうに部員達が集まっていたし、金網越しに多くの生徒が見学していた。
はぁ、と溜息を思わず零し、高校では目立つつもりないんだから…と、彼女は僅かに顔を歪めた。
「先輩に啖呵切ったな」
「ハッ!良いじゃねぇか!
壁でもなんでもやるったァ威勢いい!」
「純も受けてもらえば?
あぁ、お前絶対に取れない暴投無意識に投げるから無理か」
「テメッ!亮介ェ!
いつの話してんだよ!」
「お前ら何見とんねや!
さっさと練習戻らんかい!」
「さぁせん!」
手を止めていた2年生レギュラー─────伊佐敷純、小湊亮介、結城哲也は3年生怪物・東に言われ直ぐにグラウンドに戻った。
「…ったくあいつらホンマに…
で、咲良ちゃん、言うたか?」
「え、えぇ…」
かと思えば、東は有澄の方へ歩み寄り話しかけてきた。
どうやら先程の1イニング勝負を見ていたらしい。
「やる気のある奴は男も女も関係なく歓迎する。
ただ、ここは『青道』や。
それを忘れんようにな」
「…はい!」
彼がこのチームの中心の理由も、ビックマウスでありつつも後輩から慕われる理由もここにあった。
ここが甲子園へのスタート地点。
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