◎おねえちゃんといっしょ
「波香ちゃん、お昼ご飯にしましょう?」
時刻は正午。
事務員、調査員は昼休憩に突入する。
波香に話しかけたのは事務員である春野綺羅子。
ちなみに太宰はほんの数秒、波香が目を離した隙に消えていた。机に処理済みの書類の山を残して。
「ごはん…!」
「うふふ、お弁当作ってきたの。
口に合うといいのだけれど…」
と取り出した小さな弁当箱は、世間の女児が熱中する戦う女の子がプリントされている。
パカリと開くと、中の半分は白いご飯、もう半分はおかずとしてハンバーグ、卵焼きを初めとするお弁当の定番からアスパラのベーコン巻き、ミニトマトなど彩りと栄養を考えたメニューが詰められていた。
「何か食べられないのある?」
という質問に、ブンブンと首を振り「いただきます」と手を合わせるとお弁当箱とセットであろうお箸を手にして、中身を口にする。
「…おいしい…」
「本当?良かった」
ふふふ、と笑って春野が波香の頭を撫でる。
その時だった。
ポロリ、と大きく綺麗な瞳から大粒の涙が零れて机を濡らす。
「え…!?どうしたの!?
む、無理して食べなくてもいいのよ!?」
「違い、ます…おいしい…」
しかし、そんな彼女の感想の後、口は一文字に結び、涙をポロポロと零し続ける。
困ったようにオロオロする春野。その姿に見かねた与謝野が小さくため息を吐いて、ソファへ近寄る。
「ゆっくり食べな」
ポンポン、と撫でた。
そして、目玉さえ溶けてしまいそうなほど涙を流しつつ、また箸を進めた。
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「ただ今戻りました〜」
「戻りました」
ガチャりと扉を開いて入ってきたのは敦と谷崎。
「おぉ、ご苦労だったな」
国木田がそちらを見て労われば、敦はキョロキョロと事務所を見回す。
「あれ…波香は…」
「…そこだ」
指さされたソファに顔を覗き込むと、あぁ、と敦は苦笑した。
くぅくぅと小さな寝息を立てて眠る幼い姿に、そう言えば、と時計を見遣る。
時刻は14:20。
孤児院では6歳以下は昼食後の昼寝の時間があったな、と思い出した。
「あはは、ご飯の後は眠いもんねー」
と笑う谷崎に、国木田が言う。
「3時になったら起こす……隣の唐変木もな」
「…だ、太宰さん…」
国木田が言うには、いつの間にか戻ってきていた太宰が波香の隣を陣取り、眠る体制に入った。怒鳴りかけた国木田に「波香ちゃんが起きちゃうよくにきぃだくぅん」とニヤニヤとしながら注意し、くっ、と言葉を飲み込んだ国木田を尻目に、寝入ったらしい。
ともすれば、寄り添って眠る姿は
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