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おねえちゃんといっしょ

「波香ちゃん、お昼ご飯にしましょう?」

時刻は正午。
事務員、調査員は昼休憩に突入する。
波香に話しかけたのは事務員である春野綺羅子。
ちなみに太宰はほんの数秒、波香が目を離した隙に消えていた。机に処理済みの書類の山を残して。

「ごはん…!」

「うふふ、お弁当作ってきたの。
口に合うといいのだけれど…」

と取り出した小さな弁当箱は、世間の女児が熱中する戦う女の子がプリントされている。

パカリと開くと、中の半分は白いご飯、もう半分はおかずとしてハンバーグ、卵焼きを初めとするお弁当の定番からアスパラのベーコン巻き、ミニトマトなど彩りと栄養を考えたメニューが詰められていた。

「何か食べられないのある?」

という質問に、ブンブンと首を振り「いただきます」と手を合わせるとお弁当箱とセットであろうお箸を手にして、中身を口にする。

「…おいしい…」

「本当?良かった」

ふふふ、と笑って春野が波香の頭を撫でる。
その時だった。

ポロリ、と大きく綺麗な瞳から大粒の涙が零れて机を濡らす。

「え…!?どうしたの!?
む、無理して食べなくてもいいのよ!?」

「違い、ます…おいしい…」

しかし、そんな彼女の感想の後、口は一文字に結び、涙をポロポロと零し続ける。
困ったようにオロオロする春野。その姿に見かねた与謝野が小さくため息を吐いて、ソファへ近寄る。

「ゆっくり食べな」

ポンポン、と撫でた。
そして、目玉さえ溶けてしまいそうなほど涙を流しつつ、また箸を進めた。

──────────────

「ただ今戻りました〜」

「戻りました」

ガチャりと扉を開いて入ってきたのは敦と谷崎。

「おぉ、ご苦労だったな」

国木田がそちらを見て労われば、敦はキョロキョロと事務所を見回す。

「あれ…波香は…」

「…そこだ」

指さされたソファに顔を覗き込むと、あぁ、と敦は苦笑した。
くぅくぅと小さな寝息を立てて眠る幼い姿に、そう言えば、と時計を見遣る。

時刻は14:20。
孤児院では6歳以下は昼食後の昼寝の時間があったな、と思い出した。

「あはは、ご飯の後は眠いもんねー」

と笑う谷崎に、国木田が言う。

「3時になったら起こす……隣の唐変木もな」

「…だ、太宰さん…」

国木田が言うには、いつの間にか戻ってきていた太宰が波香の隣を陣取り、眠る体制に入った。怒鳴りかけた国木田に「波香ちゃんが起きちゃうよくにきぃだくぅん」とニヤニヤとしながら注意し、くっ、と言葉を飲み込んだ国木田を尻目に、寝入ったらしい。

ともすれば、寄り添って眠る姿は父娘(おやこにも見える。

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