「はい」
「ありがと」
前から回ってきた一枚の紙。
学芸会のお知らせ。
それをカバンの奥に押し込みその上から教科書を入れる。ぐしゃっと紙が音を立てた。
学芸会ねぇ。あの忙しい母が来るとは思えない。
組織の幹部、世界的大女優、私の母。
三つの顔で一番最初に切り捨てられるのは最後のひとつだ。
彼女が私を愛してくれているのは分かる。
だがそれは私が普通の子供だと思っているからだ。
もしも彼女が私が普通でないと知れば?
人生2週目、強くてニューゲームだなんて知ればどうなるかだなんて明白。
きっと彼女は私を愛さなくなるだろう。
子供を演じ、それでいて聞き分けのいい私。
彼女には、彼女にだけは私を子供として見てほしいだけ。
だから、彼女に罪悪感を抱かせてはいけない。
ねぇ、母さん。
捨てたお知らせ
健全な子供ではないなんて、きっと既にバレている。
*
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