小学校というものはここ、アメリカでは日本のように自動的に上がるものでなく、学力が低ければ留年というものが付きまとう。
まぁ、強くてニューゲームの私には小学校の学力程度は関係ないのだが。
記憶を取り戻してからは日本人としての感覚も蘇り、私の容姿が母に似ているはずなのに「東洋人」だからといじめられないか心配になったり、教えこまれていた先生には敬語であったり、初対面の人間には同級生であってもファーストネームでは呼べなかったり。
まぁ、適度に礼儀正しい子、と認識されているらしい。
私の戸籍上の名前は、アリス・グリーセクト。
なんの名前か分からないけれど、やはりベルモット……基、シャロン・ヴィンヤードの娘として世に出るわけには行かないらしい。
もちろん彼女も素顔で学校に来ることもないし、更にいえば来ないというものだとわかっている。
そりゃあそうだ。女優としても組織幹部としても彼女は多忙な毎日を送っているのだし。
もう私は授業参観や運動会、学芸会に親が来ないくらいで泣くほど精神は子供ではないし、
"親が来ない"ということに対して、不満に思うことも、"友人"に聞かれて悲しむことももうない。
母であるシャロン・ヴィンヤードはかつての母、あの女と違い私を愛してくれていることは伝わるのだから。
だから、寂しいなんて感情、表にでてこないで。
普通じゃない私が、普通になりたいだなんて思ってはいけないのだから……
愛されているだけで幸せを感じねばならないの。
例え愛されているのが、"私"自身でなくっても。
零れた雫
起きると枕が濡れているのはなぜ?
「さっさとしろ。いくら車だろうと遅刻するぞ」
気だるい朝に急かすジンの声。
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