あの事件から数日。
五歳の私は少し考えた。
この世界を生きるのに、学歴がいる。
考えてみれば裏の人間として生きるか、表で生きるか。
分岐点はまだ先に置くに限る。
「ねぇ、ママ」
「どうしたの?」
「わたしね、学校に行きたい」
「そうねぇ……そろそろ決めないといけないものね……」
出かける準備をする母に言う。
「わかったわ
小学校を決めましょう。こっちの学校でいいわよね?」
「ここから通えるところなら……」
「なら私立ね……
送迎は構成員に頼めるし……」
あ、これ厳つい人が……くる……
「帰るまでに色々決めておくわね
今日は早めに帰ってくるわ」
「うん。ありがと」
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アリスがいつの日かを境に素直になった。
どこか大人びた自身の娘を不思議に思わないでもないが、きっと、まだ聞く時ではない。
以前言った「組織の人間になりたくない」というのは、何かを悟っているからだとは思う。
確かに、組織は犯罪集団で、本音を言えば、アリスを危険に巻き込みたくはない。
それでも、私の娘に生まれたからには、巻き込まれるのは必然だろう。
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「ねぇジン、ジンは、組織にいて楽しいの?」
「あぁ?」
「どうして組織にいるの?」
「……組織に属する他、生きる方法も、理由もねぇからだ」
「ふーん……」
20を超えていないはずの彼は普通にタバコを吸っている。
……母さんにバレたら私の前で吸うなって怒られるくせに……
誰もいない隙にいろんなことを調べた。
やっぱり私は、どちらの味方でもない位置につきたい。
中立的立場で、そう、ワガママだろうけれど。
生まれた場所のせいで生き方を決められるのは、もう嫌だ。
なにより、黙って人が死ぬのを見てはいられない。
そろそろ準備期間
人生の準備
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