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一足先に



「みぃちゃんもう忘れ物なぁい?」

「うん大丈夫〜!」

ガサゴソとボストンバッグやら紙袋に私物などなどを詰め込み、看護師さんと話すゆきちゃんに返事する。
よっこいせ、と小さく声を上げて松葉杖を突けば隣のベッドには不機嫌そうな松田さんがこちらをじとーっと見ていた。

「なに?」

「別になんでもねぇよ」

「ふぅん? ごめんね一足先に退院しちゃって」

「完治してねぇ癖に……」

「いや普通に考えて骨折はそんな長期入院しないからね?」

というかそもそも足の骨折程度で何週間も入院しない。
手術も終わってるし、老体じゃああるまいし。
その上私なんかよりこの人の方が私を庇ったせいでよっぽど重傷だ。

「まぁまぁ、ちゃあんとお見舞いも来てあげるからさ!
内臓やってんだから最低限そこが治るまでは入院でしょ」

「こんなんほっときゃ治るんだよ」

「治るわけないでしょ唾つけときゃ治る理論は脳筋だよ」

「うるっせ……っ……いっ……!」

「あーもーほらぁ」

「松田さん静かに!
体に障るしここ病室なので!」

看護師さんに注意され痛みに呻く松田さん。
そんな中ガラリと扉が開かれた。

「よう、元気してるか?」

「に……よ、こかわさん」

「ゲッ……横川……てめぇなんでここにいんだよ……」

扉から顔を出したのは警視庁生活安全課、横川亮也。
忘れられているだろうけれど一応、前世での私の兄に当たる。
ちなみになんやかんやあって既に巡査部長になっているらしい。
よく知らんが。
あと、何話か前にも言ったけど何回か私に説教しに来てる。

「そういや、お前開放骨折?」

「そうそう」

「で、松田先輩は肋骨と内臓損傷?
良かったっすね切除とか摘出になんなくて不幸中の幸い」

「うるせぇ! つかなんでお前若干医学詳しいんだよ!」

まぁ前世普通に医者だったしねこの人。
私よりも強くてニューゲーム状態の警察官。
免許ないだけで死亡確認も出来ちゃう……怖……。

「まぁ……知ってて損ないですし」

「損ないとかいうレベルかよ」

「そういうレベルですよ。素人の付け焼き刃」

いや元々本職だろ。何が素人なん。

「みぃちゃん〜手続き終わったから帰るわよ〜!
じゃあ松田くんお大事にね!
あら? 貴方……昔いらっしゃった警察の方よね?」

ゆきちゃんよく覚えてんな〜!

「えぇ……えぇ、まぁ」

「良かったら乗っていく?」

「いやいやいやゆきちゃんやめとこう?
この人生活安全課だとしてもゆきちゃんの運転他人乗せるのはやばいよ多分」

「え? そんな事ないわよぉ〜! ねぇ?」

「ははっ俺も車なのでせっかくですが今回は……」

まぁ有名だったもんね……

「あら残念! それじゃあ仕方ないわね……
じゃあ、帰るわよみぃちゃん」

「はいはい。
じゃ、松田さん安静にね〜」

「うるせぇはよ帰れ」

不機嫌だなぁ相変わらず……

余談ではあるけれどゆきちゃんの運転は相変わらずでした。
いや、マジでなんで普通に運転しないの……技術はあるのに……

一足先に

足治るまでは色々めんどくさいなー、と思いながら工藤邸から大学行くシステム。

*


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