×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -
思い通りになると思ったら大間違い



刻々と画面のタイマーは時間を刻んでるけれど爆弾解体自体はあと一歩のところまで来ていた。

残り1分と少し。
ここから飛んだとしても爆風に乗れば5m程度向こうの木々生い茂る茂みに落ちれば運がよければ無傷、悪くてまあ……って感じ。

「あ〜あもうすぐだね〜あの世でハネムーンでもしちゃう?」

「死を前提にして茶化すな馬鹿。お前だけは生かして帰してやるよ」

「1人だったら諦めてた?」

「まあな」

「アハハじゃあ乗ってきて正解だったわけだ」

外はサイレンと叫び声が響いて聞こえる。

「正解な訳あるかこの馬鹿」

「うっわ馬鹿って二回も言った」

「大馬鹿者だろ。一般人はおとなしく守られてろや」

「それは警視庁に言ってね、っと時間だね」

5、4……

dorset×A4……(3、2

「米花中っにあわん!」

「っ! てめッ!?」

松田さんをぽっかり空いた出口へ勢いよく蹴り飛ばそうとしたけど同じ考えだったのかあっちはあっちで私の腕を掴んで投げ飛ばそうとしていたからか、変な態勢で咄嗟に観覧車の床を勢いよく蹴りつければ2人で出口から体が飛び出した。
そのとき――――――ドォン

すぐ近くで爆発音が響いて何も聞こえなくなった。
熱い気もするけど熱くない気もする。
思わず目をぎゅっと閉じていれば暖かいたばこのにおいに包まれて突風が体に当たらなくなる。

いやに滞空時間が長く感じたが、ドッと急な衝撃が来てまた落ちる。

数回衝撃があってようやくしん……とした。
はっと目を開けると目の前は男性物のYシャツと青の緩いネクタイ。

「松田さん!?」

私の下敷きになった形で倒れ込んでて心拍が上がる。
こんな形で守れないなんて事あってはならない。
急いで起き上がって松田さんの全体状態を確認するけどいかんせん頭が回らない。
手が震えて頭も真っ白で、遠くから「美音! 松田!」と萩原さんや「美音ちゃん! 松田くん!」という佐藤刑事、他の捜査官とか目暮警部たちの声がこだまする。

「ま、ださん……松田さん……!」

――――怖い。
――――――死なせたくない。
――――――――お願いだから

「私のためにも生きて……」

心拍はあるし今は生きている。
呼吸を確認して、場合によっては人工呼吸を――――

「ってぇ……うるせぇ……あ〜くっそいってぇ……」

絞り出すように彼の口から声がした。

「松田さん!」

「あ? あ〜……生きてるか……」

腕を使って起き上がろうとしているが顔を歪めて途中で体を倒しているしこれは腕とか。

「動かないで」

制止をして肋骨周辺をなでるように触る。

「いっ……〜〜〜〜〜っ!!!」

「肋骨かなぁ…内臓が大丈夫かわかんないな…」

私が五体満足なのかわかんないけどさ。
アドレナリンで痛みが感じないだけかもしれない。
目に見える擦り傷も痛く感じないし。

「萩原さん! 佐藤刑事! ここ! 救急車呼んで!!」

ガサガサとようやく萩原さんと佐藤刑事がこちらにたどり着く。

「ったくこんの馬鹿…!! 佐藤さんこっちだ!」

「救急車は10分程度来るわ!」

「あと、もう一つの爆弾は米花中央病院、萩原さん行って!」

「了解。美音、覚えてろ」

「ピエッ……」

「……よくわかったな」

「伊達に探偵なんて言われてないよ〜遺伝の賜だね」

「って美音ちゃんは大丈夫なの!?」

「う〜ん、痛くないんだよね〜……多分アドレナリンで」

「じゃあなおさら動かないで! もう!」

佐藤刑事は涙ながらに私を叱ってるし、松田さんは松田さんで私をにらんでいるし……
え?なに?褒められこそすれ怒られることなくない……?

そんなこんなで動かず待機しれてばパトカーとは違うサイレンが響く。
救急隊員がこっちに来て松田さんを担架に乗せて私の動きも制する。

「動かないで! 脚折ってますから!」

「あー……はは……マジすか……」

パンツを切られて見てみれば確かに割とパンパンに腫れていた。

「はいここに寝てください。いち、に、さんっ」

ゆらゆらと揺れる担架で救急車へ向かう。

「ざまあみろ」

きっとまだこの辺にいる犯人に向かって吐いた言葉はきっと届いてない。

思い通りになると思ったら大間違い

いつの間にか気がついたら病院のベッドの上で横には萩原さんがにっこり笑顔で立ってたよ!
笑えねぇ。

*

prev next
back