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そしてまたねじ曲げる



手元にあるのは白地に赤と黒で描かれた狐面。
丁度いいサイズで目と鼻が隠れる。
これは、ただ単に顔を晒したくないから。
勿論、ここにいるだろう赤井さんにね。あ、あと降谷さんにも。

ビルの中に二人の男が駆け上がる。
靴底と薄い鉄がぶつかる音が響き、私の鼓膜を揺すった。
私は私で、階段とは裏側方角に回り鉤爪を掛ける。
以前利用したものと同じ物で、重宝している。
真下にこれまた博士の発明品、一瞬で大きく膨らみクッションになるバルーンを設置し、鉤爪で自分の体を上へと持ち上げる。
あとはタイミングを計る。ミスをすればスコッチはきっと自分で自分を殺してしまう。携帯のデータ諸共。

タッタッタッと男、降谷零が建物横を通り過ぎるのが目下に見えて急激に体を上昇させる。
下には信用できる人に頼んであるからとりあえず私がするのは、落とすだけ。

屋上の桟に両足を着地し、襟首を持って柵から引き下ろす。

「ぐっ!?」

「なっ……は……」

引きずり落とした時、胸ポケットからスっておいた携帯端末を屋上の床に落とし、元は赤井さんのであろう銃で撃ち抜く。
尚もカンッカンッカンッカンッという階段を駆け上がる音が響く。

「……もうすぐこのビルの上でちょっとしたボヤ騒ぎが起きます。
危険ですから階段を駆け上がっている方も連れて避難してください」

「まて、君は一体何者だ」

「……今は組織の人間ではない、ということしか言えません」

スイッチを取り出して見せる。

「早く!」

急かせば赤井さんが踵を返して階段へ向かった。
それを見送り私は下へ飛び降りる。

「おい美音! お前なぁ!」

「話は後で聞くから! 耳塞いでて!」

これで降谷さんと赤井さんの諍いが無くなればいいのだけれど……
ドッという爆発音が木霊した。

「ちょっと冗談でしょ……爆発デカすぎ……
火薬間違えたかな……」

「お前マジで馬鹿なの!?」

「うっさい!! 早く車!」

「師匠をこき使いやがって!」

「ちょっちょっと待ってくれ!
君は一体……」

スコッチ……私が聞いたのは村雨光という、恐らく偽名。

「村雨さん、今はとりあえず乗ってください。
身を隠さなければならないでしょ?」

情報漏洩されないためにも、暫くは身を隠し、ゼロにも生存報告をしない方がいい。
それはきっと彼自身もわかっている。

そしてまたねじ曲げる

ひとまずこれで良かったのだろうか。
まだまだ結果はわからない。
彼が助かったのならそれでいいというのも、結果論に過ぎない。

*

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