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この拍動が止まる時は



ドクン、ドクン

と、左胸の肉の下が忙しなく動く。
本当は、今日だとは思っていなかった。

築数十年は経っているだろう鉄板の階段に古ぼけたビル。
何度深く酸素を肺に送り込んだかわからない。
私が今からしようとしてることは、世界的犯罪組織に関わってしまうことだ。

死ぬ運命だ、と。
そう言い聞かせ耳を塞げば平和で安全な日常は保証できる。しかしだ。
決められた運命に則るなど面白くないでしょう?

人生で一度は言ってみたかった台詞を言えたのは収穫だね。

成功するか失敗するかは五分五分。
バレてもいいんだろうが話の筋を変えて失敗すれば元も子もない。
全部が壊れる。この世界自体が。

やるからには、失敗するわけにはいかない。
だってこれは、私のエゴだから。

私が居なくても円滑に回る世界だから。

「もしもし? 皇くん?
今から送る場所に車で迎えに来て」


この拍動が止まる時は

結局どこまで行っても手探りで

*

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