泣いた我が身に明日を見い出せ
昨日の夜から寝ていない。
本来睡眠不足というのは健康にも悪いのだが致し方ない。眠れなかったのだから。
この四年間。
長かったようで準備には短かったような気がする。勿論、心の準備の話だが。
服に着替えて早朝に警視庁へ向かった。
眠気覚ましにエナジードリンクを飲み、一階のロビーのソファに腰を下ろす。
十分ほどすれば普段の出勤よりも随分と早い萩原さんと松田さんが背後から声をかけてきた。
「よう」
「……ん……」
「お前、寝てねぇだろ」
「……寝られるほど図太くないよ私」
「んまぁ、寝てろ。何かあれば起こしてやるからよ」
「どこで? いいよ平気。
すぐに動けるようにしておきたいしさ」
呆れたように笑う萩原さんに、叱るように言う松田さん。
この人たちとも、今日でお別れか、と思うと少し寂しくも思うが。いや、勿論私が死ぬつもりも彼らが死ぬのを見るつもりもない。
まぁ、今日が終われば多分、三年後までは会わないように出来るだろう。
同じ警視庁でも機動隊と捜査一課は遠い。
隠れて移動すれば一年もすれば彼らは私のことなど忘れるだろうし。
「ちょっどうしたの!?」
「は?」
「お前、泣いてんぞ」
目を見開く萩原さんに眉を顰める松田さん。
頬に触れればなぜだか濡れていた。弱いなぁ。
「何でもないよ。目にゴミ入っただけ。
んじゃ、待とうよ。犯人からのメッセージをさ」
泣いた我が身に明日を見い出せ
*
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