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まだまだおこさま



美音に電話をぶち切られた。
心当たりがあるとすれば、

「ストーカーか」

ボソリ、とこぼす。

「萩、行くぞ」

「は? いや、俺報告書「戻ってきて残業すりゃいけるだろ」なんでそんなに厳しいこと言うんだよ!
手伝ってやるとかねぇわけ?」

はぁ、とため息をついた。

「ストーカーが動いたらしい。
横川引っ張ってあいつん家行くぞ」

「……美音ちゃんが言ってたのか?」

「アイツがんなこと相談するかよ。
カンだよカン」

呆れたようにも見える萩原はそれでも報告書を書く手を止めて上着を羽織り、立ち上がる。

「違ったら陣平ちゃん、報告書代われよ?」

「その上奢ってやるよ」

急いで生活安全課へ向かい、横川を拾って車を飛ばす。

ピンポーンとチャイムを鳴らすも反応はない。
仕方ないか。

ガサガサと庭の方へ向かい、ガラス戸を開ける。

「ちょっ松田先輩!? さすがにそれは……」

「うっせ。美音!」

「!?」

丁度リビングにあたる部屋へ繋がるガラス戸の先には美音が俺の姿を見て立ち竦んでいた。

「よう」

「ふ、不法侵入!」

「仕方ねぇだろ。警察官だ」

「職権濫用!」

「あーあーうるせえ
で? 何があったんだよ」

あの様子からして何かがあったはずだ。
むしろ、何も無いわけがない。

「美音ちゃん。言った方が身のためだよ
っていうか、前に言ったとおり、抱え込む方が危険だろ? なぁ、横川」

「何かあったなら言ってくれ。
……後手後手に回るわけに行かない」

「なにもない、本当に。
私一人で解決できる……もう、子供じゃないから」

「じゃあ、これはなんだ?」

「ちょっと!? ほんとに手癖悪いね!?」

奥の部屋から前はなかった箱を引っ張り出せば、中身は

「……写真、か」

「うっわ何この枚数」

「……」

バツが悪そうに顔を伏せる美音に、俺を含む警察官3人で厳しい顔をする。

「美音前に言ったことわかってるか?
相手は何をするかわかんねぇし、何よりお前は女だ。
いくら強くても男の力には適わない」

「っ……分かってるよ!
それでも、私のことで誰かを巻き込みたくない」

強がる姿にため息しか出ない。
馬鹿じゃないこいつに頭ごなしに叱っても逆効果。
完全に閉ざされれば何も出来なくなる。

「言ったろ? 心配くらいはさせろ
お前は1人じゃないんだから、警察官としてじゃなく俺個人としてそう思ってんだよ」

目線を合わせそう語りかければ、美音が小さく「適わないなぁ……」とひとりごちた。

まだまだおこさま

出し抜けるわけねぇだろ。

電話のタイミングが良すぎただけだよ。

強がる彼女に思わず笑いが漏れた。


*

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