記憶の奥がざわめいた
「美音ちゃーーーーん!!!!」
バンッと音を鳴らして扉を叩き開けたのは萩原さん。
「うるさっ!」
「萩原先輩人の家に上がる態度じゃないっすよそれ……」
「うるせぇ! 美音ちゃん無事なの!?」
「うるせぇっつってんだろ!」
ドゴッ
「いっ!? ちょっと陣平ちゃん!」
「静かに出来ねぇのかてめぇはよォ!」
「美音ちゃんがあぶねぇのに落ち着いてられっかよ!」
「そのことを聞きに来たんでしょうがあんたは……」
頭を抱える黒髪の男性にどことなく既視感を覚えた。
「んなことより!
俺は初対面なんですから自己紹介しますよ」
「はぁ〜????
別におめぇのことなんてよくねぇ?」
「良くないっすわ。全然良くないっすわ。
俺は横川亮也、警視庁生活安全課の刑事です。
よろしくな。えーっと白樫さん」
亮也……
ずきりっと頭の中心が痛んだ。
「はじめまして。
白樫美音です……」
ずきり、ずきり
「美音……ちゃんな」
「おいなに名前で呼んでんだよ横川ァ」
────美音、今日は元気そうだな。
「っ!」
頭の中にヒビが入ったようにずきりと痛みが継続的に起こる。
そんなわけがない、と思いつつも
彼の名前に引っかかる。
「じゃあ、早速だけど犯人の心当たりとかあったりするかな?」
─────今日はよく食べれたな。薬、減らしてみようか?
そんなはずない。
そんな偶然あるわけがない。
記憶の奥がざわめいた
どうした? と返答しない私の顔を彼は知っている仕草で不思議そうに覗き込んだ。
脳裏からの記憶が私を硬直させる。
*
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