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どっかで恨みを買ったらしい



ドンッ

と結構力強く背中を押された。

目の前は階段。
それも歩道橋で、高さは軽く5〜6mくらい。
足が踏みしめているべきところから離れて空を切る。

首を後ろに向ければ名も知らぬ黒い人。
異様なスローモーションに感じて宙に浮いた体は無重力にすら感じる。

デジャヴ。

この感覚を、私は知っている。

目の前の人はすぐさま走り去るつもりのようだった。

あぁ、死んだなこれ。
まだ前の生の歳を超えてもないのに。
まぁしわくちゃのババアになる前に死ねるならいいのかね。

今回は下がコンクリだし、海より痛いかも。
結局生まれ直しても転落死するのか。
笑っちゃう。

その時、背中に冷たいものが伝った。
目の前に、父さん、母さん、兄さんがいる。
こちらに手を伸ばして立っていた。

背後には崖。

息を飲んだとき、急激に体が下へ落下する。
背中が空を切る音がする。

来る痛みに目を閉じる。と、

「っ! 大丈夫か!?」

と誰かに受け止められた。

「……?」

死んでいない。

し、痛くない。

「どうした? どこか痛いかい?」

顔を上げれば目深に被ったキャップで見えにくいが、したからははっきり見える金髪に褐色の肌、整った顔立ち。

うわぁ、ここでこの人に出会っちゃう〜?

「っだ、いじょうぶです」

「なら良かった。怪我してるかもしれないからちゃんとお家で確認するんだよ……さっき押した奴は知り合いかい?」

「さぁ……顔はほとんど見えなかったし……」

「そうか……悪い、もう行くね」

「ありがとうございます……」

私の言葉も終わる前に背後の階段を走って上り黒い人間を追って走り出した。

「……降谷、零……」

そう小さく呟いてはっと周りを見渡した。
近くに公安でもいればまずい。
いくら萩原さんや松田さんと知り合いと言えど下手な疑いをかけられることから避けるに越したことはない。

チラチラと見渡しても不審な姿はないし恐らく居ないだろう。
と、いうか、あの人が追いかけたということはまさか組織の人間? それともまだ公安じゃないか?
いやいや、2年後には組織に潜入すると考えればもう公安か。

「……まぁ、いいや」

さすがのハイスペ。
あの高さから落ちた中学生をちゃんと受け止めて、しかも私怪我してないからな。
すご。

「……はー、まぁ、いつか出会うのはわかってたとしても不意打ちは困っちゃうなぁ……」

独り言が出ちゃうのはご勘弁。
帰ろうね〜私。

……解決した事件に組織関係が完全になかったとは言いきれないな……後で調べてみよう……


どっかで恨みを買ったらしい


大人連中にだけはバレないようにしよう。

*

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