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だてに年くってない



目が覚めた時、白い天井が視界を覆った。

「……」

あぁ、そうか、私は生きているのか。

「……あら、美音起きた?」

「……かあさん……」

「今先生呼ぶわね」

微笑む母さんはナースコールを押した。

「……」

外を見れば日が傾いてるのか、薄暗い。

「……今、何時?」

「4時よ」

「……そんなに寝てた……?」

「何言ってるのよー朝の4時よ
病院に来てまだ2時間もたってないわよ」

「あー、うん、そっか……」

手足の感覚はあまりなく、それなのに頭はくらくらする。

「まだ寝てなさい!
熱もあるんだから!」

マジかー、道理でふわふわすると思ったわ。

それからすぐ医者は来て、簡単に診察をする。
意識の混濁もなく、記憶障害もない。

「熱以外は健康体ですね。
でも風邪も侮ってはいけませんよ!
風邪は万病の元、しっかり休んで、しっかり治してください。
このまま経過を見て問題がなければ明後日には退院出来るでしょう」

「ありがとうございます」

医師は出ていき、個室の病室はガランとしている。
他の手続きをするため、母さんは医師と一緒に出ていった。

記憶のある限りのことを思い出せば、首に繋がれた爆弾の解体をしに機動隊爆弾物処理班が私の監禁場所に来て解体、その後曖昧なのは誰かに抱えられ車に乗りこんだ事だ。
そこで記憶が途切れているということは、意識を失ったのだろう。

「なんにせよ……」

助けが来ないうちに寝るなんてことをしなかったことは私を褒めたい。

コンコンッ

と扉がノックされる。
ここは警察病院だろうし、不審者はいないだろう。

「はい」

からっと軽い音を立てて扉は開かれた。
そこに立っていたのは父さん。

「起きたかい」

「うん」

その表情からは何も読み取れない。

「──すまない」

ふわっと暖かく大きな手が頭を撫でた。

「え?」

この人が謝る理由、あぁ、今回の犯人に絡まれたことか。

「巻き込んでしまって、怖い思いをさせたね……
母さんにも叱られてしまったよ」

視線は落とされてこちらを見ない。

「……別に気にしてないし。ってか、そんな感じの父さんキモイんだけど」

「えっ……」

口もとをひくつかせて、こちらを見る。

「そもそも、私だって普通に事件に巻き込まれてるし! 解決してるし! 今回だって私が解決したら誘拐されたのが母さんだったかも知んないでしょ? 優作くんだったら新一が誘拐されてたでしょ? たまたま父さんだっただけで調子のンないでくんない!?」

しおらしいこの人はいささか気持ち悪い。
調子も出ない。
事実、あの爆弾事件を私が解決していればこの人と同じ結論を出していただろうし。
誰も悪くない。悪いのは、

「悪いのは、父さんじゃなくて犯人でしょ」

「っ美音ちゃーーん!」

「うわっちょっやめっ……」

ガバッと抱きつかれて身動きが取れない。
くっそ、しおらしいままの方が良かった!


だてに年くってない

「君は不思議な子だね」

そう言った父さんに目をそらすことしか出来なかった。


*

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