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にゃーにゃーにゃーん



最近近所に野良猫がいる。

「にゃーにゃー」

誰も見てない空き地で3匹ほどの子猫が群がってくる。

「兄弟なのー?
ふふ……にゃんにゃーん!」

猫は可愛い。子猫はくりくりした大きな目でこちらを見上げてくる。
キジ猫と黒白、三毛猫の3匹は仲良くじゃれ付いてくる。

「うちで飼えれば良いんだけどごめんね……
……もう少し、そうだなぁ、あと、7年したらまたおいで」

にゃーにゃーと見上げてくる子猫は首を傾げる。
「……って、7年もしたら貴方達もういい年よね……
また、ご飯持ってくるから。
今は無理だけど、きっとあなた達の子供くらいなら、きっと」

動物用のミルクを皿に注いで空き地の隅に置く。

「じゃあね、にゃんにゃん?」

指をひと舐めされ、猫はミルクを飲んだ。

「へぇ〜猫がいるんだな〜!」

ビクリッと3匹が固まって私の後ろを見た。
マジかよ。と顔を歪めてゆっくりと立ち上がり振り返る。

「久しぶりだね? 白樫美音ちゃん? 」

立っていたのは紛れもなく萩原研二。

「……ええ、お久しぶりです。萩原研二さん」

「あれ? 今日は逃げないの?」

きょとんとする萩原さんは22歳とは思えないほど幼く見えた。

「逃げたところで家まで特定されては困りますから」

ため息をついて彼を見るとどこか嬉しそうにこちらを見返した。

「さっすが〜!
さて、じゃあ少しお話しようか?」

「ここで?」

「にゃんにゃんに聞かれていいのか?」

腹立つな!!! どっから聞いてたんだこいつ!!!

「にゃんにゃんは聞いてませんから!
で? 私になんの用でしょうか?」

「うんうん。
そうだね。俺これでもお巡りさんだから、逃げない方が賢明だ。じゃあ改めて聞こう。
君は何者かな?」

あらあら、すぐに確信を突くのは辞めた方がいいわよ。年若いお巡りさん。

「君には単刀直入に聞いた方がいいでしょ?」

「……うん。そうだね。
でも、まだ答えられないよ。知りたかったら、そうだなぁ……4年後、かな
それまでちゃんと、きっと生きていて」

目を伏せて言う。彼のことを見てこんなことは言えない。
未来を確定させるまで、あなた達の前に現れるわけにいかないの。
だから、

「ごめんね?」

そう言い放って萩原さんの横を駆け抜けた。

「あっえ!? ちょっと!?
マジで!?」

「マジだよ! 萩原さん! 流石にこれ以上幼気な少女を追いかけるなら生活安全課に通報しなきゃいけなくなっちゃうからね?」

「えぇ〜……」

───────────

逃げ帰った彼女の背中を見送る。
せっかく見つけたのに、とため息をついた。

「お前らはあの子に好かれてていいよなぁ……」

にゃーにゃー、と子猫は俺の足に集る。

「7年後ねぇ、しかも俺には4年後まで生きてろって?
あの子は何知ってんだろうなぁ……
なぁ?」

って、猫に言っても仕方ねぇか……
ポケットからタバコを取り出し、火をつけた。
重い紫煙を肺に吸い込み、煙を吐き出した。

「まぁ、逃がすわけにいかないんだけどなぁ」

あのまま追いかけても彼女はきっと前みたいに俺を撒くだろう。
普通の道であれば追いつけるが、角や道を駆使して走るあの子に追いつくのはこの辺の地理を先に知る必要がある。
頭がいいんだろう。それでいて運動神経も、体力も普通の女子中学生より持っているようだ。
マンションから飛び降りる度胸もな。

分かったことは彼女の地元は米花町。
米花町の白樫と言えば有名所は一軒だ。
警視庁には何度か協力者として来ている、天才映画監督、白樫春彦の家。
おそらく彼女はその娘。話によれば彼の娘は今年15で、何度か彼や、彼の義弟である工藤優作の代わりに事件を解決したことがあるのだそうだ。
そう教えてくれた伊達は「ガキが事件に関わってんのは賛成出来ねぇけどな」と言っていたか。


「生きてやるさ。君が救ってくれた命だ」

あの忠告といい、あの場といい、あのタイマーといい、彼女は何者なのか。


にゃーにゃーにゃーん

3匹の猫が足元に擦り寄ってきた。


*

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