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日本は離れられません



突然母さんと父さんが私を呼びリビングにて話をすることになった。

「急に何さ」

「美音、私たちね拠点が今海外でしょう?
だから、パリに住もうと思うの」

「……で、どうするの?」

「美音ももう中学を卒業するだろう?
このままパリに移り住んで、お前も向こうの高校に通わないか?」

なるほどね。
確かに両親は小学生の頃から10年近くは海外と日本を行ったり来たりしていた。
その間私は同じ米花町の叔母夫妻の工藤家に世話になっていたが既にもう子供ではないから、ひとりでいることが多かったが。

両親は多分、私が大きくなったらこうして海外に移住し、私に着いてくるか着いてこないかを委ねるつもりだったのだろう。
両親と離れるのが寂しいかと言われればなんとも言い難い。
この人たちが私を愛しているのは分かる。
だが、しかし、分からないのだ。
愛されるという事、愛するという事が。

この件に関してだけは、私自身、別の人間として見ていたように感じた。

でも、答えは決まっている。

「……私は、日本に残るよ
やらないといけないこともあるし、二人には着いて行けない」

なんて言われるだろうか?
彼らのことは信用しているし、私を捨てるなんてことはないと思ってはいるのだ。
ただ、無条件に信じるのだけは、まだ出来ない。
信じて、後悔するのが嫌だから。


「そうよねぇ〜!
よくあなた警視庁に行ったり何かしたりしてるものね。目的があることは知ってるわ。
貴女の思うようになさい」

そう言って私の頭を母さんは撫でた。

「そのかわり!
これからは有希子のところに住みなさい!」

とだけ言うと

「さてと! 荷造りしなくちゃね!」

と、2階へと上がっていった。

「全く……誰に似たんだか……
この家は残すから好きに使いなさい。
しかし、有希子ちゃんと工藤くんの所に世話になるんだぞ?」

ちょっと待って?

「待って? ゆきちゃんところって」

「もう伝えてあるよ。
美音ならそういうだろうと思ってね」


はは、さすが『私』の両親だ。
私は疑ったことの方を後悔した。
生きた年月は私の方が長いのに。

日本は離れられません

偉大な両親は、また私を救った。

*

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