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生命掛かった大勝負



とうとう、この日が来た。
原作7年前、萩原研二がその命を落とした日。
気づいたその瞬間、周囲の隊員に逃げる様言うも、自分は最後に逃げた、とても哀れで勇敢な警察官。

私が救うなんて大層な事は言わない。
私がするのはちょっとした改変。

改悪って? そうかもしれないわね。
でも、私の一生だもの。悔いない選択をするべきではない?

私は神ではないし、救世主でもない。
世界を変える力なんて持ち合わせてないし、特別な人間でもない。いや、この世界の知識を持つのは特別なことかもしれないけれど、それを持っていても、何かを動かす力は持っていない。
絶対の保証だってない。

だって──────

一年前のあの日だって、結局私はあの人を救えなかった。
我慢出来ずゆきちゃんの名前を使って現場に向かったのに、私の目に映ったのはジェットコースターの中で彼が死へと向かう瞬間。

ただ、それを見ているだけだった。
その時、私はまた、なにか大切なものを失った気がした。

この世界は、とても美しくて、残酷な世界。
一人ひとりの行動が歯車のように噛み合い、次の歯車を動かす。

だから、私がするのは、その歯車達の中にそっと別の歯車を組み合わせること。
他の歯車が狂うことなく、もっと滑らかに動くように。

あの時私が失った気がしたなにか大切なものは、そう言えば、歯車だったのかとしれない。

─────────

前日からとあるマンションの一室に泊まり込んでいる。
この日は学校は欠席し、あることに備える。
しくじれば恐らく私も彼も死んでしまう。

なぜ一室に入れたかといえば幼馴染みが何故か所有していたからであって、決して私が購入したり賃貸として借りている訳では無い。

「ちゃんと救いますよ〜……
未来のために……っと」

周囲にはこの日のために用意した様々なもの。
電波妨害装置という遠隔操作や通信を不能にするもの、電波や音波を解析し相殺するもの、脱出用のベルト様々だ。
私がしようとしているのはあるべき未来をねじ曲げる行為。
これをしてしまえば、きっと私はもう後には戻れない。
でも──────

「あんな、無責任な馬鹿な大人の思い通りにはさせない」

彼の死はほかの人間の死をも呼んでしまう。
仲間が皆去ってしまうなんて苦痛は味わうべきではない。
残された者の痛みなど、私が理解などしきれないけれど。

窓から見る階下には続々と警察車両が集まっている。
30分ほど前に警察がこの部屋にも避難するように声をかけに来たのだろうが、そもそもここはほぼ誰も使っていないと管理人からも言われてるようだからチャイムを鳴らして確認をしてすぐ去っていった。

玲香様様である。

この部屋は爆弾が仕掛けられている場所から2階上で角に位置する。
爆発すれば私も巻き添え。
まぁ、爆弾の付近に盗聴器は仕掛けさせてもらったし、爆発を防いだ後にそれは回収する算段だが、出来なければサヨナラだな〜……

ガチャガチャと鉄製の重いものが当たる音や足音が盗聴器から音が聞こえる。
恐らく爆弾の近くへ、萩原研二やほかの機動隊員が入ってきたのだろう。
さぁ、ゲームの始まり。覆してみせよう。
くだらない馬鹿のお遊びを。


──────────
俺と松田に招集がかかり分かれて現場に向かう。
なんだよめんどくせぇな2箇所も爆弾仕掛けやがって。
捕まえて一発殴ってやりてぇ。

俺が向かうのは高層マンションの一角。

いつも通り皆と出ようとした時、ふと5年前に出会った少女の言葉が脳裏に蘇った。

『5年後、マンションで気をつけて』


米花デパートの入口で言われた一言。
普通に考えればマンションなどそこらに建っているし、今までだって何度も出入りしている。
しかし、マンションでの爆弾解体などそう言えば初めてかもしれない。
普通、こんな所に爆弾を仕掛けるヤツなど居ないし。

いつもは通り過ぎるその場所の前で無意識のうちに立ち止まっていた。
松田のやつは今回も着ているだろう。
一人じゃ着れないあのめんどくさいやつを。
───────────



『当マンションの住民の避難完了しました!』
『りょーかい! んじゃま、ゆるゆるといきますか』

ガチャガチャと何やら重いものを装着する音や布の這う音が聞こえる。


PRRRR....

『なんだよ松田ぁ……』


イヤホン越しに聞こえる彼の声に博士の作った解析機器と接続した自身のパソコンに手をかける。
相手が仕掛けてくる。
事前に爆弾から出る微弱な受信電波を解析し、周波数をキャプチャー。
その周波数のみを抜け道に、妨害電波を設定。
警戒させないためにも、万が一、7年後のように爆弾に盗聴器を仕掛けている場合にも備えて、1度はその電波を飛ばす。

その後、解析周波数を利用して博士の作った相殺マシーンを改造して作った、遠隔操作機器を使用し、タイマーを停止させる。
ハッハー!! 15年のうちって言うか助けるって決めて10年は電波とかに関すること調べまくったんだぞ!!!!! Miss,Treasureなめんな!!!!

『こっちは3分とはいかねぇな。
基本的には単純だが何しろトラップが多い
こっちが本命だったみたいだな』

『……着てるっての……なんだよその言い草は……
いつもなら着ねぇよ……今回はちょーっと気になることがあってな……
あぁ、ほら、昔言ったろ……って俺がそんなヘマするかよ』

それを聞いて思わず目を見開いた。
5年も前の、それも、小学生の戯言であるようなあんな言葉を覚えててくれたのか。

「……馬鹿じゃないの……」

もっとうまく笑えればよかったのに。

『いいねぇ! そういうお誘いとあらば、エンジン全開と行きますか!』

ピッ

と小さな音が微かに聞こえた。
相手がどうやら仕掛けたようだった。

『なに!? みんな! 逃げろ! 逃げるんだ! タイマーが─────!?』


はーーい! おしまい!
ドーーーーン失敗!

『いや、悪い……大丈夫みたいだ止まってやがる……』

っと。さて、タイマーは止まった。任務完了。
無駄に15年過ごしてきてないよ!!
これで、不測の事態が起きていなければいいけど。

『よっし、解体完了。ケースもってこい』

彼のくぐもった声が聞こえる。
どうやら、何事もなく解体が終わったらしい。
安堵のため息をつき、私も装置たちを無造作にカバンの中へしまい込む。
と、忘れてはいけない。妨害電波を解除して、彼らの撤退を待つ。

が、そう簡単には行かないかった。

生命掛けた大勝負

*

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