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未来の捜査官



車が沈んだと思うと赤井さんが走り出し、海に飛び込んだ。

しばらくすると男を肩に担ぎショルダーバッグを肩からかけて浮上した。


「あーお兄さん戻ってきた!」

「ねぇ、その人助かるの?」

「その可能性はもうない……」


確かに、

「首を折ってる……
頚椎やっちゃた、かな
……そのバッグは……?」

「この男が何者かを探るための手掛かりさ……
それより海の家で水着とかを売ってるコーナーがあっただろ?
そこへ行って車が落ちた後、ずぶ濡れでTシャツや水着やビーチサンダルとかを買いに来た客がいないか聞いてきてくれ
どうやら車にはもう一人乗っていて車から抜け出し、海水浴客に紛れ込んでいるようだ……」

「できるか? ホームズの弟子くん?」

「うんもちろん!」

走り出す新一。

「君たちはあのボウヤと三人出来たのか?」

「いーえ、あのこの両親と一緒に……」


子供の扱い慣れてんな……
わざわざ目線合わせてくるし……

「じゃあそのお母さんに警察に──「私が電話しますよー携帯丁度あるし」そうか、なら頼むよ」

「はいはーい」

─────────
「ボ、ボクは……
ボクはなにをやったらいい?
ボクにも何か手伝わせて!」

彼らに触発されたのか真純がそう名乗り出た。
そう言えば最初から俺に構ってきたがあまり相手にしてやらなかったな。

「そうだな……
駐車場のおじさんに濡れた服や水着を着たまま外へ出ようとしている客がいたら引き止めるように言ってくれ
もしかしたら悪いやつの仲間かもしれないからって……
頼めるか?」


「うん!」

返事をして真純が走って行った。


「あ、もしもし
熱浜海水浴場で車が崖上のガードレールを突き破って海に落下する事故が起こりまして……
はい、車に乗っていた運転手は引き上げてあります。もう亡くなってるみたいですけど。
あと、同乗者が居たようです……ええ、お願いします」

横で携帯で通報する嬢ちゃんは状況を説明し、現状を把握させる。
落ち着いて通報をしているし、遺体を見た時に首を痛め、どうなっているかも的確に把握していた。

なにがしがない小学6年生だ。
全くそうとは思えんな。

「すぐ来るらしいです」

「そうか……」

「それ……時計? それもブランドものばっかり……
無造作な扱いしてんな……強盗とか?」

「あぁ、この近辺だろう」

物色していると女性が警察を連れてきて、遺体を確認し、その女性に問うている。


「ほー、あの崖のガードレールを突き破って……車が海に転落したと?」


「ええ……」

「んで、この男がその車の運転手で、車からあんたが引き上げて我々警察に通報したわけか」

「あ、いえ、引き上げたのは彼で、通報したのはこの子です」

この子と俺を指さした。

─────────

「誰だい? アンタら」

「アメリカの大学に通ってるただの留学生ですよ……
今日は日本に久しぶりに帰ってきて家族とここへ……」

「私はしがない小学6年生で、この人の姪っ子
早く通報しないとって思って」

「ほう?
しかし本当か? もう一人乗ってたってのは……」

「助手席側のサイドウインドウだけ前回になっていたからそう思ったんです……
あの車は右ハンドル、乗っていたのがひとりなら助手席側の窓だけ開けるのは不自然だから……
おそらくそのもう一人は海水で車内がいっぱいになる前にウインドウを開け車外へ脱出し、
海水浴客に紛れたかと……」

「だがわざわざ窓からでなくてもドアを開ければ」

「水圧だよ。車が水没した直後だったらまだ車の中に空気があって水圧でドアが開かないと思うよ。
だから窓から出たんだよ」

「なるほど。
じゃあ連れを見捨てて逃げたってのか」

「いや、この男はシートベルトをしてなかった……
だから車がガードレールに激突した反動で東部をフロントガラスに強打し頸椎骨折で即死」

「声をかけても返事しなかったら自分だけ逃げちゃうよね。
逃げなきゃこっちが死んじゃうし」


死ぬくらいなら味方をも見殺し、いや、もう死んでたのか。

「でも、だったらなんで海水浴客のフリを……
事故に遭った被害者なら堂々としてれば……」

「身を隠さねばならない理由があったから……
この近辺の時計を扱う店で強盗事件なんてありませんでした?」

「え?
た、確かに……1時間ぐらい前1キロ先の時計店に二人組の強盗が入ったという通報があったが……まだネットニュースにもなってない事件をなんであんたが!?」

「やっぱり。この値札、ここから1キロ先の店のやつだし……」

「あらみぃちゃんよく知ってるわね?」

「去年母さんと父さんに連れてかれたの」

「そのバッグは?」

私が見ていたカバンを刑事が見る。

「車の後部座席にバッグがあってその中に値札がついたままのブランド物の腕時計がぎっしり詰められていたんでね……」

「だが、問屋さんが商品を店に運ぶ途中だとも考えられるだろ?」

「だとしたら傷がつかないようにケースに入れるでしょ? こんな乱雑で無造作にバッグには突っ込まないと思いません? 素人じゃあるまいし」


さて、ここから先は赤井さんに任せて……多分分からなけりゃ優作くん呼べばいい……って多分赤井さんが解決してたような……?

「連れてきたよ!
車が海に落ちた後、買い物したお客さん!」

と新一と丸メガネのお兄さんと3人の男女がこちらに来た。
ってあれ、秀吉さんか!?!?!? 森川ッ!!!???

1人ずつ話と名前を聞く。
あ、この女、あーーー……はい、うん。
犯人ですね!!!!

「あらいい男

「ババアうるさいよババア」

「なんだって糞ガキ!?」

赤井さんにナンパするなら骨格から直して出直してきなッッ!!!!!!!!

そうしてるとゆきちゃんが容疑者を写真に撮っていた。

「優作くんに送んの?」

「そうよー!」

と電話をかけるゆきちゃん。


「あっ! みぃちゃん! 新ちゃんたちについて行って!」

「え!? あっちょっ……はぁ……」

赤井一家と共に駐車場へ向かう。

「だからぁ〜っずぶ濡れの人や水着着たままの人はここから出しちゃいけないんだってばー!!!」

と真純ちゃんの声が響く。


「真純! もうやめなさい!」

「ママ!」

「貴方もわかってるでしょ? 私たちが事件に関わっちゃいけない人間だってこと……」


ひゃーーメアリーさんが女言葉使ってるの新鮮っ!


「問題は無いさ……Case Closed!
あとは犯人を名指しするだけだから」

「まぁ、さっきゆきちゃんが優作くんに写真送ってたから多分優作くんももう分かってるよ」

「はぁ!? なんで父さんが!」

「そりゃあ、あの工藤優作の推理力はただ話を聞いただけで犯人を言い当てるほどだからねぇ……」

「くっそぉ!!」

浜に戻ると赤井さんは刑事に向かって言う。
横には電話をするゆきちゃん。

「ビーチサンダルを買ったと言っている
北森靖絵さん……
海に落ちた車に乗っていたのはあんたですよね?」

「え? ウソ……
あ、いや……浜辺にいた若い男があなたと同じこと言ってて……」

「優作くんもあの人だって?」

「え、ええ……」

赤井さんが推理を続けると刑事は

「み、水着じゃないのかね」

とメガネを持ち目を凝らす。

「……ド変態」

「なっち、ちが……」

そんなやり取りのうちにも推理はどんどんと続く。
正確にはビーチサンダルしか買えなかった。

「なるほど、濡れた紙幣は使えなかった。
ならば2000円もしたアロハシャツを買ったりTシャツを買った男ふたりは除外……なら、残るのはビーサンを買ったあんただけって訳だ?
それに、あんたのその時計」


─────
次々と言い当てるボクより5つ年上のお姉ちゃん。

「はぁ!?」

「10時10分。今の時刻からえらくズレてるわね?」

「お店のやつでしょ!」

とお姉ちゃんにホームズの弟子の男の子が加勢する。

「あ、当たり前よ! お店で買ったんだから! 時間がずれてるのは海に使って壊れたのよ!」

声を荒らげて否定する犯人?のお姉さん。

でも、そこからのお姉ちゃんの快進撃はすごかった。

「……へぇすごい確率の偶然ね?
ねぇ知ってる?時計屋に売ってる時計って、ガラスケースに入ってるのは10時10分で展示されてるのよ。
時計のブランド名が客からよく見えるかのように
そして、それはブランドの時計。
当然、製造番号としてシリアルナンバーが掘られているわ」

5歳しか変わらないのにしっかりしていて、吉兄ちゃんみたいにスラスラと言い当てる。
さっきの一番上のお兄ちゃんの推理みたいに。
まるで、女の子のシャーロック・ホームズみたい!
そのお姉ちゃんの言葉に諦めたのかお姉さんは話し出した。何があったのか。

───────

「……なるほどね……
だからあの男にバレたのか……
注意されて言い争ってたらあいつが前方不注意で海に真っ逆さま。
まさに転落人生ね」

女は刑事に連れていかれ、メアリーさんが

「もう気が済んだでしょ! 帰るわよ!」

と赤井さんに言う。

が、刑事が話を聞きたいから、と止めるように言ってきた


「早々に推理してくれてありがとうございます
あと、刑事さんが事件の詳細を聞きたいから署に来て欲しいらしいんですけど」

これで夜になるまで推理とかしなくていいし?
まぁ優作くん居るから良いんだけど呼び寄せたりゆきちゃんに探偵役やらせるよりは早かったよなー

「それは君たちに任せよう
時計の真相を見抜いたのは君たちだ
なんだって君は、我が国が誇る名探偵の弟子なんだからな……」

と新一の頭を撫でた。

「あははありがとうお兄さん」

「我が国って……お兄さんイギリス人なの?」

「あぁ
今はアメリカ人だが……
それより、この事件、探偵の修行にはなったかな?」

「うん!」

うわー……コナンと赤井さんやん……

「兄さんまるでホームズみたいだったからね」

「違うよ!
ホームズはもっともっと超スゲーんだぞ!」

「ちょ!? 新一それすっげぇ失礼だな!?」

失礼すぎるぞお前!!!!

「で、でもまぁ、ワトソンぐらいにはしといてやるよ……」

と、照れた様に言うと

「フ……ハッハッハッハッ!!
Dr.ワトソンか! そいつはいい!」

えーーー!!!
メッッッチャ笑うじゃん!!! なに!?!?!? 怖いな!?!?

──────

お兄ちゃんが笑った!
ボクがどんなに頑張っても出来なかったことをこの子が簡単にしてしまう。
まるで、

「ね、ねぇ君……」

「ん?」

「まるで魔法使いだね

それから、こっちのお姉ちゃんは

「お姉ちゃんは女の子のシャーロック・ホームズみたいだった!」

「はぁ!? ホームズはもっとすげぇんだってば!
みお姉なんかより!」

「ちょっとあんた口に気ぃつけなさい!」

「あだだだ!!」

魔法使いくんはホームズのお姉ちゃんに頬を引っ張られている。
もう帰らないといけないけど、また、この人たちと会えるかな?

また、会いたいな……
魔法使いくんとホームズのお姉ちゃんに……


─────

たしか、赤井さんに次に会うのは────


「9年後、アメリカで」

「!」


「みぃちゃーん! 警察署行くわよー!」

「はーい!」

赤井さんのびっくり顔ゲットー!

「君は───」


じゃーね、未来のFBI捜査官、赤井秀一さん。

───

去り際に彼女が言った、『9年後、アメリカで』

予知しているような言い方だったな。
小学生にしては博識で、大人びた少女。

彼女が言った時何かを見透かされているような気がした。
まるで、本当に未来を知ってるかのような。

面白い。会った時に弟子の彼の推理を的確に訂正し、サングラスに隠れたこれをアザと断定する観察力。
そして、あのクラヴマガの腕。

また、彼女にはどこか出会う気がするな。


未来の捜査官

海で泳いで疲れたし今日は早く寝れそう!

*

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