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1412からのメッセージ



「ピッチャー振りかぶって第1球!」

「うおおお!!!!」


パコンッ!


「あっ!?」

「白樫選手満塁ホームラーーーン!
ゲームセット!
はい、掃除続けろバカ男子」


マンガの掃除時間みたいなことすんなよこいつら。


「まぁた白樫に打たれたァ!!」

「てかおめぇは乱入すんなよ!!!」

「ならさっさと掃除しろってんでしょ」


抑えられずため息が思わず出てしまう。
するとそんな時に


「美音お姉さまぁ!!!」


と1年生で新一、蘭ちゃんの幼馴染み(?)
園子ちゃんがかけてきた。


「どうしたの園子ちゃん。
わざわざ3階まで」


息を切らして膝に手をついている。


「さ、さっき! 図書室の掃除をしていたら!
ぎ、業者の人が……」

「落ち着いて?」

「でもでもぉ!」


相当焦ってんな〜


「帰りに新一と蘭ちゃんと一緒に聞くから!ね?」

「わかりました……
ぜーーったいですよ!!」

「うん。約束ね」


再度パタパタと廊下を駆けて戻っていった。

図書室ねぇ……なんかあったっけ?

────帰り道


「で? 園子ちゃんどうしたの?」

「それが、業者の人が言ってたんです!
満月の夜、図書室に出るって……」

「……出るって、何が?」

「ぶ、不気味な鳴き声の……変な帽子をかぶったお化けが!!!」

「だぁかぁらぁお化けなんているわけねぇだろ」

「でも言ってたもん!」

「お前をビビらせようってだけだろ下らねぇ」


あーあ、
新一バカねぇ……


「ふぅん? 新一くん、怖いんだ?」

「なんだと?」

「怖いんでしょ! だからそんなふうに「んなわけねぇだろ! バァーロー!」そう?」

「なら俺が正体突き止めてやるよ!」


と捨て台詞を残し走って帰っていった。


「アホの極みなのかしら……」

ん? 待てよ? これってなんか聞き覚えがある話だな……


───夜


「どこいくのかなぁ新一くぅん?」

「ゲッ! みお姉!」

「あんたも馬鹿よねぇ〜」

「うるせぇな! みお姉にゃ関係ねぇだろ!」

「はいはい。
蘭ちゃんも行くなら気をつけなさいよ
夜遅いんだから」

「へいへい」


さて、尾行しようかな。


「バァーロ!! この世にお化けなんかいやしねぇつーの!!」


怒鳴る新一にタジタジになりながら反論する蘭ちゃん。
道で痴話喧嘩すな……

学校につくとやはり、窓の鍵を開けておいたのか一階のとある窓から侵入する2人。
不法侵入と取られなきゃいいけど……
10年前……ってわけでもないけど未来だったら多分SE〇O〇くらいしてるだろうし、今だからできる事ね……

ふたりが入ったのを確認して私もそこから侵入する。
先に見える図書室には人影が見えたが、

ガラッと音を立て扉が開くと適当なあの警備のおっさんが出てきた。
ヒックヒックと定期的に声を上げ、顔を赤らめてることから今日も一杯やっているのだろう。

出ていった警備員の後ろから新一と蘭ちゃんが入室する。
私は外で待機すると、中から蘭ちゃんの

「お化けが帽子かぶって窓から覗いてる〜っ!!」
という叫び声が聞こえる。

大方カーテンの影だろうが、まぁ新一なら見抜けるだろう。

幽霊の正体見たり枯れ尾花。
それを見て帰ろうという声のあと、外からなのでくぐもっているが微かに

「本当にそうかい?」

と男の声が聞こえる。
その後

「なんだお前!?」

と新一の声。

「警備のおじさん呼んでこい!」

ガタッガタッ

「あれ!? 開かないよ!?」

「なに!?」


……やっぱり。
黒羽盗一。マジシャン。怪盗1412、通称怪盗キッド。

しばらくすると新一と蘭ちゃんが図書室から出てきた。

数分待ち、私は中へ入る。
誰もいない空間。窓の隙間風で変な音が響く不気味な空間で、

「黒羽盗一さん」

と呼びかけた。

「おや、お嬢さん
なぜ私の名を?」

「まぁ、色々とありまして。
一つだけお教えします」

「ほう?」

「新一はかなり意地っ張りなので、優作くんにまでこの暗号行きませんよ
きっと」

「なるほど。それでは彼からの返事は期待出来ないかな?」

「まさか!
工藤優作を侮らないでください
きっと返事を用意しますよ」

「ははは……
侮ってはいない。待っているよ」

「それともう一つ、
2年後、ジェットコースターでのマジックは控えてほしい」

「私が?2年後か……
それは保証できないな」

「っどうして……!」

「マジシャンにはやらねばならない時がある
必ず」

そういう彼は、かっこよかった。


そっと帰宅するとゆきちゃんが電話をしていた。


「うん、うんわかった!
新ちゃんにはこってりお説教しておくから……
ごめんね、英理ちゃん
おやすみ……」

カチッ

受話器を置き背後の新一に振り返る。

「さて、ゲロするまで寝かさないわよ新一……
夜の学校に女の子連れてなにしてたのかなぁぁ?」

「だ、だから言っただろ?
忘れ物を取りに行ったって……」

「どうしたの?」

「みぃちゃん!
新一ったら蘭ちゃん連れて学校に行ったのよ! こんな時間に!」

「あー……」

「みお姉言うなよ!?」

なんでそう言っちゃうかなぁ……

「あら? みぃちゃん知ってるの?」

「……さぁ? で、新一は何しに行ったって?」

「忘れ物を取りにって……
それ答えになってると思ってんの〜?」


新一にヘッドロックをかけ拳で頭をグリグリと米神に圧をかける。


「まぁ、いいじゃないか!
無事に帰ってきたんだし……」

優作くんが原稿を手にゆきちゃんを窘める。


「でもねぇ優作……」

「それに刑事の尋問じゃないんだから、怒ってばかりじゃ何も話してくれないさ……

まずはその怒りを鎮めて……冷静になってだな……」

「! それ、どんな字だ!?」

「え?」

ゆきちゃんの腕から抜け出した新一が振り返って問う。
急な問にゆきちゃんは聞き返すが

「『いかりをしずめる』ってどんな字か聞いてんだよ!!」

ポケットから例の、『ハイドの怒りを鎮めよ』と書かれた紙を出し、こんな字ではないかときく。

それを手に取った優作くんは頷くが、ゆきちゃんが

「どうしたの? この紙」

と、きく。
勿論本当のことを話せば暗号云々の前に学校に忍び込んだ目的や不審者……いや、盗一さんだけど……の事を話さねばならないからだ。


「あ、いや、先生が作った……あ、暗号でさ……」

「ひどい先生ね……小学一年生にこんな難しい漢字……」

「だが、なぞなぞ好きの面白い先生のようだ」


一瞬で見抜いたのか優作くんは笑った。

「あ、そうだ! このゴールデンウイークのどこかで海にでも行ってみるか」

「あら! いいわね


あの優作くんが急にこんなことは言わない。
つまり、まぁ、暗号のヒントだろう。
それに気づいた新一だが、ゆきちゃんに風呂場に押されてすぐ寝かされるハメになった。

っていうか、私完璧には覚えてないけどなんとなくの流れは覚えてるけど…


──翌日

既に新一も出かけた頃、パソコンを閉じて

「あれ? ゆきちゃんどっか行くの?」


身支度を終えて、玄関へ向かうゆきちゃんに問う。

「ええ、変装術の師匠と食事にね!」

「そうだ有希子、師匠に会うならこれを渡してはくれないか?」

「あ! ファンレターの返事ね!
どれどれぇ〜」

「開けちゃうんだねゆきちゃん……」


ガサガサと開けると、中から出てきたのはエクスクラメーションマーク、「!」が一つ記載されているのだった。

「なぁにこれ?」

「彼に渡せばわかるよ。
いや、彼ならば渡さなくてもわかるかもしれないね」

「……分かったわよぉ……
あ! どうせならみぃちゃんも行く?」

「やめとくよ
黒羽盗一さんには、2年後にでも会いたいしねー」

「2年後?」

「なーいしょ」


あの場では私は救えない。
ならば、私がいることで歪んで、彼が無事に生還するのを祈るばかり。


1412からのメッセージ

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