イーってなる
諸伏景光が『死んで』しばらくたった。
うちは改装中ということにしていて、年も越したがこの1ヶ月ほど私とゆきちゃん以外は近づいていない。
新一には子供は危険だから、とゆきちゃんがじっくり言い聞かせている。
.....どういったのかは定かでは無いが。
「で、私はもう見てらんないんだけど」
じとーっと見つめる先はその改装中の我が家に住まわせている諸伏景光がいる。
「うーん.....なんか話を聞く限り思ったより響いてるみたいだな」
「あったりまえでしょ.....」
「そりゃ、今すぐにでも言いたいけどね.....
5人で去年協力だってしたんだし.....」
「去年?」
「あれ? 聞いてないか?
俺とゼロ、松田に萩原に伊達で───あー.....いや、なんでもない」
「え、途中でやめられる方が困るんだけど!」
「うーん.....あの観覧車の爆発の前日にね、
たまたま同期5人で会ってね」
「それって.....組織潜入中の話ですよね?
本当にたまたま?」
もちろん、と苦笑して彼は言葉を続ける。
「ちょっと用事があってね。5人で集まったんだ」
「へぇ……」
警察学校の同期、うち2人は潜入捜査中の捜査官なのに警察官と集まったりするんだ。
組織の……特にジンとかに見つかったらやばくない? とはさすがに言えず。
諸々片付けてから本格的に調べようと思ってたけど、情報を集めるのに一度だけ組織に関わりがありそうな会社のシステムに侵入した事がある。
勿論、あの組織に対しての大っぴらな情報があった訳じゃないけれど、数点怪しい箇所が残されていた。
明らかに意図的に消された痕跡が残っていたそれにマーカーを付けて今は泳がしている。
もしかしたら、公安はとっくにマークしているのかしれないけれど。
って、そんなことは今はいいんだよ。
「……その、ゼロ? って人にくらい言えば?
唯一私が『知らない』人だけど、名前すら言わないってことはその人も公安でしょう?」
「あはは、面白いことを言うね。
本当は知ってるでしょ? 俺が公安だって知ってたくらいなんだから」
「……知ってるって言ったら、どうする?
口封じでもする?」
「まさか。命の恩人にそんな手荒な真似はしないよ」
「『命の恩人』のままならでしょ?」
そもそも、降谷零についてはこっちで情報は拾ってない。勿論、諸伏さんについてもそれは同じだけれど、実際降谷零は私「は」知りえないことなのだから、間違ってはいない。
正攻法で入手できる情報なんかじゃないからだ。
「そうだね。君のことを知らなすぎるから」
「そう? 私の事なんてよく知ってると思うけど」
「買い被りすぎだよ」
「その言葉はそっくりそのまま返します。
なんでも知ってるわけじゃないから」
だって、あのお方のこと、私は知る前に死んだから。
イーってなる
あれ? でももしあちらで出ていたのだとしたら、あの人は知ってるかも?
というか、この「お手紙」は結局いつ渡すのよ!
*
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