タイミングはアナタ次第
────「悪い、帰るわ」
そう言って踵を返した松田さん。
「ごめんね、俺も今日はやっぱ帰るね」
続いて萩原さんも背を向けた。
ごめんね、は私の台詞だよ。
きっと、今すぐにでも私は彼らに教えた方がいい。
悩ませないためにも。
頑張って受け入れようとしている彼等の努力を踏みにじる行為をしている自覚はある。
それでも、私が勝手に彼らの関係値に首を突っ込むわけにはいかない。
諸伏景光は、警察庁警備局警備企画課──ゼロ所属の潜入捜査官だ。
警察官としても優秀で、信頼されているからこそ危険な黒の組織への潜入も任された。
そんな彼が徒に同期達に秘密にしているわけが無い。
警察官としても、彼自身としても。
でも、これはわがままだろうか。
知らず知らずに私を助けてくれた彼らを悲しませたくないと、そう思うよ。
あの封筒はいつ手渡していいのだろうか。
タイミングはアナタ次第
無性に小さく見えた背中に小さな謝罪を
*
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