ブン太視点。ブン忍なんだか忍ブンなんだか自分でもよく分かりません。
俺は誘うのがうまい。と自負している。
誘うっていうのはセックスみたいな行為のこととか普通に買い物中のおねだりとかも含めて全部。
今までの恋愛もうまく誘って相手から告白されるよう仕向けて、女子男子構わず気になった奴は全員俺におちた。はず、なのに。
氷帝学園の伊達眼鏡野郎。なんでお前はおちねえわけ?
▼狼とオオカミ[前編]
最初はただの敵対心。
エリート組っぽい氷帝の中でも特に気取っているような態度が気に入らなかった。だから練習試合の時に話すような機会があっても自然と避けるようにしていた。
なのに、こんな気持ちになってきたのはジローに会いに氷帝へ遊びに行った時からだ。部室へ行ったらアイツがいて。
「せっかく会いにきてくれたのにすまんのう、芥川は今補習中やさかい」
「…あっそ、ありがと」
あまり忍足にいいイメージをもっていなかった俺は、はやくこの場から立ち去ろうと思い内心苛立ちながらも部室を出ようとした。その時、「ちょっと待ち」
「…何?」
「補習いうてもそない長いもんとちゃうし、あと20分ほどで戻ってくる思うで?」
「…じゃあ適当に待たせてもらうわ」
再度出ていこうとする俺の手を唐突に忍足がつかんできた。
「まあまあ、そないに避けんでもええやろ?俺は1回丸井と話してみたかったんやけど」
避けていることは前からばれていたのだろう。忍足が不敵な笑みを浮かべて俺を見つめてくる。俺はその笑みに苛立ちと腹立たしさを感じながらも返答を返す。
「何話すんだよ」
「さあ?同級生と話す前にいちいち内容なんて考えとらんわ」
無表情でこんなことを言うものだから俺はついおかしくて笑った。
「なんかお前俺が想像してるのと違うな」
「…どんなん想像してたん」
少し怪訝な顔をしながら忍足が聞いてくる。
「どんなんでもいいだろぃ。じゃ、ジローが来るまでここで待たしてもらうわ。」
それから俺と忍足は色々な話をした。テニスの話からはじまってジローの話、それぞれの学校の話、家族の話。
忍足は俺の想像とは全く違って、話しやすくて面白いやつだった。それにたまに見せる笑顔が妙に幼くて俺よりも10cmよりは身長が高いであろうこの男がかわいく見えた。
その日から俺は忍足と急速に仲が良くなって度々メールするようになった。メンバーとは距離が近すぎて話せないような色々なことを話した。
たまに試合で会う時もジローに会いに行くふりして本当は忍足目当てってのが多くなった。
それでも忍足は裏の裏までは見せないって感じでミステリアスな雰囲気がずっと漂っていた。
それもあってかだんだん気になるようになってきて。
正直もう俺は忍足を友達以上の目で見てる。
となると俺の天才的なテクで忍足をおとすしかねえな!って最初は思ってたんだけど。
こいつが予想以上に厄介なやつだった。
意味深な言葉を囁いてみたりスキンシップをちょっと激しめにしてみたり今までのやつらならもう完璧おちてる、のに。
でももうなんとなく分かってきた。忍足は俺と同じタイプだ。おとされるよりおとすタイプ。
多分コイツもう俺の気持ち分かってる。そんでからかってる。なあ、そうだろ忍足。そっちがその気なら俺はもう意地でも負けねえぞぃ。直球勝負だ。
俺は家に忍足を招待することにした。
あまりに唐突なことだったのでさすがに忍足も少し驚いたようだったが、少ししてから小さく笑みを浮かべて了承した。
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