におぶん23歳
色々と設定おかしいです
ごめんなさい
ほとんどブンちゃんの語り。


▼残像

降り積もる雪。駅のホームも停車している電車も何もかも真っ白に染まっている。
列車が動き出す。田んぼだらけの町並みも、遠くに見える山も本当に綺麗に他の色に混じり汚れることなく真っ白に染まっている。
「俺もあんな風に綺麗になりてぇなー」
意味の分からない呟きをしてみる。目的地に着くまであと2時間弱。要するに暇なのだ。
目的地は東京。立海レギュラー陣で同窓会をすることになったのだ。
「仁王…来んのかな」


あれは高校3年の冬だった。
あと2ヶ月で卒業、という時に仁王が転校した。
本当に突然のことだった。学校で担任から知らされるまで、俺は何も知らなかった。
今思えばその1週間前頃から、仁王が妙に俺やレギュラー陣に遊ぼう遊ぼうと誘ってきていたのだから、仁王にとっては突然の転校ではなかったのだろう。
当時の俺はその事に腹が立ってしょうがなかった。クラスも一緒で正直柳生より仲がいい自信があった。なのに。なのに、なんで俺に教えてくれなかったんだよ仁王。俺、お前のことずっと好きだったのに。

転校してから一度だけ仁王からメールがきた。

『言ったら寂しくなると思って、転校のことずっと言えんかったんじゃ。すまんかったのぅ。』

返信は、しなかった。
送ろうと思えばいくらでもメールは送れた。でも送れなかった。


そうしている内に月日は過ぎて、アイツと連絡のつかないまま俺はもう23になった。
仁王には…会いたいような会いたくないような。
会ったら、俺はどうなるのだろう。もう仁王への思いは断ち切ったつもりだし、まずアイツは俺のことをただの友達としか思っていないだろう。
「なんか自分で考えて悲しくなってきた…ていうかなんで今更仁王のことなんて考えなきゃいけねえんだ!」
つい声が大きくなってしまい、前に座っている乗客が俺をちらっと振り返る。俺は内心焦りながらも謝罪の意を含めて会釈をする。
「はぁ…」
もし同窓会に仁王がいたとしても、もう転校はなかったことみたいにして明るく振る舞えばいいじゃないか。うん。そうだそうだ。自分を無理矢理納得させる。東京まであと少し。
長いと思っていた道のりは案外短く、こんなもんかとあっけなく感じた。
駅では赤也が迎えに来てくれるらしい。
「アイツ…どうなってんだろう」
あんなに子供っぽかった赤也ももう22歳だと思うとなぜだか笑いが込み上げてくる。
仁王のことを考えると少し気が重くなるが、他のメンバーにも会うのだと思うと俄然楽しみだという気持ちが大きくなってくる。
「次に停まります駅は東京―――」
車内アナウンスが鳴る。
食べていた菓子や飲み物をカバンに詰め込み、降車の準備をする。

新幹線の速度が遅くなる。ゆっくりスピードを落とし、停車。
新幹線を降り、改札を出る。赤也らしき人はいない。
「アイツどこで待ってんだ…」
溜め息をつきながら、赤也に電話しようと携帯を開く。
プルルル…
発信音10回。赤也はでない。
「何やってんだアイツ…」

とりあえず駅から出ようと携帯をしまい出口へ向かう。スーツを着たサラリーマン風の男にぶつかって転びそうになる。東京はやっぱり人が多い。
時刻は12時30分。同窓会は7時から。まだまだ時間はある。
もう赤也を無視して勝手に1人で観光でもしていようか。自分から言い出してきたのに来ない赤也にイラつき、自棄になっていた、その時。

「お久しぶりじゃのぅ、丸井。」

聞き覚えのある懐かしい声が後ろからふってきた。
訛りのような変な口調。
聞くだけで安心させてくれる、俺の大好きな声。俺の、俺の。

「仁王……っ」

なかなか振り向けずにいると、仁王が俺の正面へ回ってきた。
「なんじゃなんじゃ、久しぶりの対面やってのに無視か?」
俺の顔を下から覗くようにして見上げてくる。心臓の動きが早くなる。
「よぅ…久しぶりだな」
フッと仁王が笑った。
「じゃ、行くぜよ」
「え、ちょ!どこ行くんだよ?」
「同窓会までまだまだ時間あるじゃろ?それまで2人でデートじゃ」
「は?!デートっておま…あ、赤也はいいのかよ!」
「赤也が寝過ごしから俺が来たんじゃよ」
「あんにゃろう…」
「まあまあ、そのおかげで2人でデートできるんじゃから!」
「デートって言うなよな、気持ち悪ぃ」
「ほいほい」

そう言ってさっさと階段を降りていく仁王。昔から何も変わっていない。俺の好きだった仁王と何も。メールしなかった自分が馬鹿みたいだと小さく自嘲した。

「早く来ないと置いてくぜよー」俺より少し下の段から聞こえる仁王の声。
「おぅ!」


東京の冬が俺の頬を赤く染めた。








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