目の前には大量の菓子。赤やら青やらのカラフルなパッケージが机の上を占領して山のようになっている。そしてその奥には口いっぱいにクッキーを詰め込んだ丸井。


「ブンちゃん…まだ食べるんか」

「当たり前だろぃ!今日のメインディッシュをまだ食ってねえんだぞ」


そういって目の前に差し出されたのは、丸井の好きな菓子メーカーの新製品。
甘いチョコクランチの中にマシュマロやキャンディが色とりどりに混ざり合っていて、美味しそうというよりは、

「甘そう…じゃの」

「それが良いんだろぃ」

手に乗せていた菓子をひょいと口にいれ、おいしそうに咀嚼する。この姿を見ると、幸せそうに食べる奴だといつも感心してしまう。自分はあまり食に関心がないので尚更だ。
よくそんな甘そうなものが食べれるな、と一瞬神経を疑うが。


「痛っ…」

「どうした?」

「んー、唇切れた」


丸井の唇にうっすら血が滲んでいる。薄桃色の唇に赤が映えて不謹慎だがドキッとした。


「この時期はよう切れるからのう」

そう言ってふと時計に目を移す。11時か。今日は一日休みの予定だったが午後から部活があると昨日幸村から連絡があった。
そろそろ部活の準備をしなければいけない時間だと思うのだが、菓子を食べる丸井の手は一向に止まりそうにない。
きっと真田でも止められないだろう。幸村ならできるかもしれないが。


「丸井、俺にもなんか一つくんしゃい」

「えー」

「あんまり甘くないやつで」

「しょうがねえな」


そう言って手渡されたのは蜂蜜が中にはいったチョコ。どう考えても甘そうだ。
訝しみながらも小さなそれを口にいれる。ビターなチョコが溶けると中から甘い蜂蜜が溢れてくる。
二つがあわさって丁度よくほろ苦い味が口に広がる。

「うまいのう」

「だろぃ!」

ニカッと笑顔を返した丸井の口元が一瞬歪んだ。


「痛ぇ…また切れた」

さっきの傷がまた乾燥してしまったのだろう。更に深く唇が痛々しく割れていた。
乾いた唇を舐める仕種が、意識していないと分かっていても妙になまめかしく見える。

唇が切れるなんてよく見る光景だろうに、なんだか今日の自分はおかしい。
さっき食べたチョコに何か変なものでも入っていたのだろうか。丸井の一つ一つの行動が自分を誘っているかのように感じてしょうがない。
「のう、ブンちゃん」

「んー」

「キス、させてくんしゃい」

「雅治くんのスケベ」


「…乾燥した唇には蜂蜜がいいんじゃよ」

さっき丸井に貰ったチョコを口にいれ、丸井が反応を返す前に素早く唇を奪う。唇を舌でこじ開けるように開かせ口腔を犯す。このまま食べれてしまえばいいのに。


丸井が息苦しそうな声を漏らしたのでゆっくり唇を離す。離れ際に蜂蜜に染まった舌で軽く唇を舐めてやった。

「潤ったぜよ」


一瞬驚いたように見えた表情が、すぐに挑戦的な色に変わった。左の口角が上がる、誘うというよりもむしろ獲物を狙うような表情。


「何お前、盛ってんの?」


そう言った彼が俺の唇にゆっくりと深く口づける。唇を離した時に鈍い痛みが走り、丸井に噛み付かれたことを知る。


「お返しだぜぃ」

「なんだかんだノリノリやの、丸井」


首に手をまわして、俺を真っ直ぐに見る瞳。口の中は甘い菓子と血の味。

ああ、食べられるのは俺の方か。







(今日は部活休んでイチャイチャじゃ)

(は、何言ってんの?俺幸村くんに怒られんの嫌だし)

(え…いや、雰囲気的に…)

(盛ってんなら一人で寂しくシコってろよ)

(…行きます)





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ブン太誕生日企画「Cotton Candy」様に提出させていただきました!
ブンちゃん誕生日おめでとう!!
てか小説…誕生日全く関係なくてすみません…







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