要約まみれ
「ん…んぅ……」
「起きたか。ギンタ!」
「元気そうで良かった!!」
「あまり元気じゃない。頭クラクラする。」
そりゃ下級兵が相手とは言え多対1の後にファントムと戦ったんですからね。
おっさんも葉巻をくわえ同じような事言ってます。いつも思いますがよく落としませんよね、葉巻。
最中、ドロシーさんが長老にカルデアの現状を伝えてました。街は半壊するもARMは無事だったとか。
さて、本題に入りますよ。ギンタ君どうぞ。
「ファントムがいた。」
そんな彼の言葉に皆さんは目を見開き驚愕しています、無理もありません。
「ギンタ…君っ……ファントムとも戦っとったんかい!!?」
「うん、負けちまった。オレは自分の力を過信してたよ。」
「い、今気づいてよかったんやないの?」
「うん。」
ギンタ君がナナシさんとそんなやりとりをしているその隣で、おっさんが酷い顔をしていました。おそらくこいつ馬鹿だなとでも考えているのでしょう。
そのさらに隣でいち早く納得したかのような顔でアルヴィス君が口を開きます。
「成程、ミツキが今、この場にいるのもそう言う訳か。」
「察しがいいですね、流石アルヴィス君。」
「…あ!ミツキ!何でここにいるんだ!?」
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「つまりかくかくしかじかこうこうこう言う訳なんですよ。」
全員揃った所でさらっとここにいる経緯を説明。便利ですね、この言葉。各面々から「無事でよかった」の言葉を貰いました、ありがとうございます。
そんな中続けてアルヴィス君から一言。
「だが、一時的にでもチェス側にいた以上、何も無いまま終わるとは思えないな。」
「あなたは相変わらずですね。まあ、私がそっちの立場だったら同じ事を危惧したでしょうが。」
「アルちゃん、ミツキちゃんが実は裏切ったとでも言いたいん?」
「そう言うのでは無いんですよナナシさん。確かにアルヴィス君はあの顔を免罪符に非情で容赦の無い暴言を吐くのが得意な毒舌家です。常日頃から私を腫れ物扱いしている気がするのは事実ですが今の彼の対応は至って冷静でまともです。」
「お前な…」
何か言いたげなアルヴィス君を無視して話を続ける。
「そう、私は裏切ってなんぞいませんが、眠っている間に遠隔操作が可能なダークネスでもかけられていて味方を不意打ちで後ろからサクッ、とかぐちゃっ、とか困るでしょう?」
情報の漏洩もあり得なくはありませんしね、と続けました。
「その相手がアンタだったら女の子に刺された、なんて事情が事情でも不名誉な噂が流れるかもね。」
ケタケタ笑いながらドロシーさんが言うと「そりゃアカンわ…」とナナシさんは少し落胆し、続けて「あれ?なんか自分が悪い事になっとらん…?」と否定を求めるような視線を送って来た気がしたので「気のせいです」と返しておきました。本当に気のせいですし。
さて、長引かせる物でもありませんしこの話もさっさと終わらせましょう。
「そうですね、疑いを晴らすならアリスを使えば一発です。かの…彼に解けない呪いなんてそんなにあるとも思えませんしね。私は、一向に構いませんよ?」
さあ、どうぞ。とその場に胡座をかきます。案の定、ギンタ君とバッボのアリス発動争いが始まりました。それを眺めつつ横目でアルヴィス君を見ると、
「……まあ、操られていたらそんな事言わない…か?」
と、一人納得したのでこの話は幕引きとします。さて、次に進んでくださいな。
「……そういえば皆さ!ARMは貰ったの?」
ドロシーさんの言葉にギンタ君もバッボも言い争いを止め、他のメンバーを見ます。皆さん、いい笑顔です。
「皆それぞれの属性のARMを頂いたよ。いずれ戦いでみせてやるさ。」
え、なんですかそれ。凄くうらやましいのですが。
そんな私の心情を読んだのかどうか知りませんが。
「ミツキのも預かってるよ!」
と、スノウ姫。安心しました。これでもうビショップなんぞに負けませんね。待ってて下さいねレプロット、次は新ARMでぎったぎたにしてやります。
「そうそうARMと言えば……バッボについての話が途中じゃったな。」
相手は超偉い長老ですがいつもの如く長い話は要約します。
特殊な魔力を秘めたARMはカルデアの魔法使いが特別な彫金を施したアクセサリー、マジックストーンに、魔法をダウンロードして造る物、魔力の通っていないARM(カスタム前のジャック君のスコップとか)は普通の彫金師でも造れるとか。
それでいて、バッボは「人間の意識」をもダウンロードできる唯一のARMなんですって、ちなみに前長老の意識が魔力と共に存在してるとか。
偉いと思ってしまいますが、今は只のARMなので別に偉くは無いそうです。
で、カルデアには「オーブ」と呼ばれる全世界の悪意を持った人間の意識を封じていた物があってディアナことクイーンはそれの封印を解いて意識をバッボにダウンロードしてカルデアから出てったそうです。
おっさん、アルヴィス君は6年前のバッボを間近で見てましたし今の説明に納得した模様。よっぽど凄まじかったんですね、当時のバッボ。
「今はそれは入っていないようじゃ。違う意識が入っているように見える。お主、半分の人格の記憶を失っておるな?」
そう言って長老がバッボに手をかざし、
「どれ、消えている記憶が戻るように魔法をかけてみよう。」
と、言葉通り魔法をかけたのでしょう、一瞬部屋が強い光に包まれます。
「バッボ……?」
光が収まり、ギンタ君の声にバッボが此方側にゆっくりと振り向きます。
「お前……ギンタ…か?」
「当たり前だろ!!何言ってんだ、バカっ。」
「……はっ。そ、そうだな!!」
酷く驚いた顔をしていました。個人的に言わせて貰えば思いがけない人物に会ったかのような、そんな顔。一体彼はどうしたのでしょうね。
バッボの話が落ち着くと、ドロシーさんが明日のウォーゲームについて切り出しレギンレイヴに戻る事となりました。
あ、帰る直前にカルデアでホーリーARMをかけて貰いました。特に呪いはかかってませんでしたとさ。めでたしめでたし。
⇔瞬間的な浮遊感を感じ、直ぐ様着地。帰って来ましたレギンレイヴ。何回目かわかりませんが昨日ぶりです。
そんな私たちを見て兵士やら観戦に来ている一般人やらが声をあげます。何やら切迫詰まった様子。
「おお!!ギンタ達が帰ってきたぞ!!」
「ミツキも一緒だ!!」
「大変なんだギンタ!!!」
「どしたの?」
「う、うん。『そこで』……チェスの兵隊を名乗っている男が…」
そこで、と彼が指差す方向に全員顔を向けます。
「………子供達と遊んでるんだ。」
そうですね、言葉通りなんともまあチェスの兵隊らしき成人男性が子供達に囲まれ共にはしゃぐ微笑ましい姿が。ギンタ君はひっくり返っています。
直ぐ様「なっ……何者だおめーっ?!!」と叫ぶギンタ君に相手は「ん?」と振り返ります。仮面です、髑髏の仮面を着けています。前のキメラほどの禍々しさは感じられませんが正に悪と主張したいかのようですね。彼の周囲の雰囲気はその真逆になごやかですが。
「やっと帰ってきたか待ち疲れたよーっ。ま、子供達と遊んでたから楽しかったけどね。伝えたい事があってさ。『ナナシ』ってどの人?」
「自分。何かあるの?」
「君に会いたがってる男がいるんだよ。次の5THバトルに必ず出て来て欲しいってさ!!」
「ですって、指名ですよやりましたねナナシさん。」
「相手が女の子やったら嬉しかったんやけどなあ…」
貴方も相変わらずですね。
「そしてオレはゾディアックのメンバーの一人『アッシュ』!!オレが戦いたいのは…ギンタ君。君さ。」
君にも指名が入りましたよやったねギンタ君。