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おつかれさま(青黄)
「もしもし桃っち!?」
「…きーちゃん」
「あ、青峰っちは」
「今出てっちゃった。テツくんに負けて、多分思うところあったんだと思うけど」
「分かった、…桃っち、お疲れ」
「ありがとう。けどそれ、大ちゃんに言ってあげて。お願い」
「うん、ありがと」
桐皇が誠凛に負けた。
それを目の前で見ていた黄瀬は呆気に取られ暫くその場から動けないで居たが、試合が終わり選手達が退場するのを見て我に帰る。青峰と黒子が拳をあわせる場面を、しっかりと目に焼き付けてから、慌てて携帯を取った。青峰に会いたい。その一心で桐皇のマネージャーである桃井に電話をかけ、自分のスポーツバッグを引っ掛けて会場を飛び出した。
暫く走ると、街灯に照らされた道に見慣れたその背中が見えた。
けれどそれはいつかに見た背中よりも幾分か小さく見えて、声を掛けるのが遅れた。ふと、青峰が振り返る。目線が交差した。
「…青峰、っち」
「…黄瀬」
僅かに驚いたような顔をした青峰は、何も言えないオレを見て、笑った。中学の頃のような無邪気な、けれど何処か切なさを帯びた表情に、黄瀬は目を見開く。
「負けちったわ、オレ」
「…うん」
「テツとやって、火神とやって、負けた。けど、楽しかったわ」
「…そっか」
そんな風に笑う青峰を見ると、ああこれでよかったんだと思うのと同時に、胸がきゅっと締め付けられた。バスケが楽しいという青峰が見られたのは嬉しい。けれど、何故か居た堪れない気持ちになって、会いに来なければ良かったと思った。ふと腕が伸びて、彼の体温に包まれる。
オレを抱き締めたまま何も言わない青峰に、置き場を迷っていた腕を自然に彼の背中に回した。言わないといけない言葉がまだだった。
「…お疲れさま、青峰っち」
「……おう」
聞こえた素っ気無い言葉は、何処か震えているようにも聞こえたけれど、泣いているようには見えなかった。彼に限って泣くなんて事はありえないかもしれないけれど。
それから、何故かオレの方が泣くなんて事は少なくない。今だって青峰じゃなくてオレが泣いているのは、悲しくなったからじゃなくて、きっとほっとしたからだ。
「…ふは、お前何泣いてんだよ」
「…おかえり、青峰っち、…おか、えり」
「! …黄瀬、」
「…なに」
「…待っててくれて、ありがとな。ただいま」
「!」
ぽん、と頭に置かれた手と、耳元で囁かれたその言葉が胸を占めて、さっきまで苦しかった胸はまた別の意味で苦しくなる。どくどくと鼓動が早い。息が、出来なくなりそうだった。
「…う、っ……ひ、うぅ…」
「おま、…あと1分で泣き止めよ」
本格的に泣き出してしまったオレの背中を擦りながら呆れたように呟く青峰は、それでも優しかった。今はただ、彼がまた此処に戻ってきてくれたんだと実感できた事が嬉しくて、また黒子っちに感謝しないといけないなと思った。少しだけ、彼を変えたのが黒子だという事実が悔しかったけれど、それでも今回はこれでよかったと思えた。彼を引っ張り上げるのが黒子の役目ならば、オレの役目は、彼が何処へ行ってしまっても、青峰を待ち続けることだと。そう、気付けたからだ。
「黄瀬、今度1on1付き合えよ」
「トーゼン。今度こそ勝つっス」
おかえり、お疲れさま
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WCで桐皇が誠凛に負けた辺りの話
無駄に長い
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2013/01/14 23:10
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