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背中を見詰めた日(青黄/キャラソン記念)



その日の試合は、殆ど無気力試合だと言っても良い程の心地悪さで、後味も悪くて、それに一番気掛かりだったのは、自分の憧れである人物の様子の事だった。


試合終盤。
敵の動きが、明らかに悪くなっていた。
それと比例するかのように、その人の動きも、粗雑なものになっていった。

最後のシュート。
それはとてもシュートなんて呼べる代物ではなくて、正に投げ入れた、と表現するのが相応しかった。それくらい乱暴なそれは、何故か彼自身を追い詰めているような気がした。



「黒子っち、青峰っちは…?」
「…先に、帰りました」
「…追いかけてくる」
「あ、黄瀬君!」

仲間の制止も聞かずに飛び出してくるなんて、ああ帰ったらこれ説教だろうなー外周三十週は嫌だなーとか考えたけれど、今はそれよりも、あの背中を追いかけるのが先だった。

「青峰、っち」
「…黄瀬、か」

そう言ってこっちを見た彼の目は、驚くくらい冷たかった。

「……1on1、」
「しねえ」
「!」

言葉の途中で遮られた。
ばっさりと、はっきりと、嫌だ、と。いつもいつもバスケに関しては行動的だった彼が、バスケに関する事柄を拒絶した、ということはつまり。


――バスケを、見てない目だ

青峰の瞳を見て、そう思った。
最後にぽつり、風の音に掻き消されて聞こえなかったけれど、何かを言った青峰が、酷く辛そうな表情をした。好きなものに裏切られたような、いや違う、知ってる、これは、


――オレと、おんなじ、だ。


やってしまえばなんでも出来て、なにも楽しくなかったあの日々。
誰よりも好きだからが為に強くなりすぎて楽しくなくなった彼のバスケ。
対抗できる敵がいない、辛さ。

痛いくらい知っているのに、どうしてオレはそんな大事なことに、彼の、青峰っちの辛さに気付いてあげられなかったのか。いや違う、もし気付いたとしても、今のオレじゃ、どうする事も、出来なかった、んだ。


――いまの青峰っちは、昔のオレと、おんなじ。
――だったら、


「…ぜってえ、分からせてやる」


あんたが、オレの世界に色をくれたから。
今度は、オレがあんたの世界にとびきりのものをプレゼントしよう。


背中を見詰めた日
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キャラソン記念黄瀬目線

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2012/12/02 00:08

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