こねた | ナノ


話は勝ってからにしようか(赤黄)




「黄瀬」
「んー?」
「おまえはずっと、オレ達が一緒に居られると思っているか?」
「…どうスかね」
「質問を変えよう。ずっと一緒に居たいと思うか?」
「…そりゃ、居たいっスよ。皆でバスケして、皆で馬鹿騒ぎして、ずっとずっと。変わらなければいいなって思う」
「…そうか」
「どうして急にそんな事聞くんスか、赤司っち」
「……おまえは何時か、オレのことを嫌いになるかもしれないな」
「え?それどういういみ、で、…っん」

曖昧な言葉を行動で誤魔化した。
これから、黄瀬には最も酷であろう選択をしようとしている自分に、何も知らない彼はただ笑っていた。その笑顔に何度救われたことだろうか、本人に告げたことはなかったけれど、自分はその笑顔が大好きだった。


そんなやり取りがあったのは、もう数ヶ月前。



東京とは遠く離れた別の土地に、赤司は行ってしまった。




「…赤司君、京都に行ったらしいですよ」
「…そ、っか」
「本当に何も聞いてないんですか?」
「……」
「…黄瀬君」

酷く泣きそうで辛そうな表情をした黄瀬を見たのは、初めてかもしれない。
黒子はぐっと握られたその拳を見て、溜め息を吐いた。

「黄瀬君は今でも、彼のことが好きなんでしょう」
「…すき、っス」
「あの赤司君が、君に黙って行ったのにも理由があると思います。だから黄瀬君、落ち込まないでください」
「……黒子っちぃ…」
「今すぐじゃなくても、きっと会えますから。それまで、彼を驚かせられるように。君には目指すべき目標があるでしょう」

強くなったオレを見たら、赤司っちは褒めてくれるだろうか。
あの青峰っちに勝てたら、赤司っちは戻ってきてくれるのだろうか。

「……無理、だ」
「黄瀬君?」
「赤司っちは、きっと戻ってこない。オレにはもう手の届かない場所に行ってしまったみたいで、…オレ、どうしたら、」
「落ち着いてください、黄瀬君」
「っ……オレ、は、」

――赤司っちに、見捨てられた?



折角慰めてくれようとしていた黒子っちに悪い事をした、と思った。
けれど胸にぽっかり空いたかのような虚無感は何をしても消えなくて、オレはただそれをバスケをする事で紛らわせた。

IHで青峰っちに負けた。
その時にああ、オレって弱いんだ、って現実を見て、こんなんじゃ赤司っちに会わせる顔なんて無いじゃん、オレ何してんだろ、って自己嫌悪に陥った。ずっと恋しくて会いたかった赤司に会いたいなんていう感情は薄れつつあった。


それから数ヶ月が経って、遂に、オレは彼と邂逅した。



――予想外の呼び出しに、短くなった髪と鮮やかな両目を見つけて、心臓が止まるかと思った。


「…赤司、っち…?」
「やあ。久し振りだね、涼太」


その声を聞くのがあんなに怖かったのに、あんなに嫌だったのに、目の前にするとどうしようもなく嬉しくて、オレの両目からは涙が溢れ出していた。



(出会った途端に泣き出すなんて、高校生が聞いて呆れるな)
(…手離せたと思ったのに、僕はまだ、彼に依存している、みたいだ)

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シリアスっぽい赤黄が書きたかったけど玉砕

comment:(0)
2012/11/23 00:25

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