外生命体とパートナー


宇宙人ーーというか別次元の知的なんだかそうじゃないんだかよくわからない生命体が発見されて五十年。
侵入を防ぐ手立てがない生命体と原住地球人の友好的な関係を築くため外生命体交流支援特別パートナー制度が法律で制定されて十五年。
外生命体交流支援特別パートナー制度とは簡単に言えば「外生命体と原住地球人が仲良く一つ屋根の下で暮らしかつ原住地球人が政府に定期レポートを提出する場合場合外生命体の身分の保証と毎月それなりの額の金を支給しますよ」という制度だ。
珍妙なペットを飼ってレポートを書けば金がもらえるのだから破格の条件といえるのだが、この制度を利用している人はほんのわずかだった。
なにせ外生命体には人のそれとは異なるとはいえ確固とした知性がある。
犬や猫などの愛玩動物のようにほいほい気軽に選ぶことはできない、というか、基本的におだやかな個体が多いとはいえ軒並み格闘経験や従軍経験のある大人が複数人でかかっても簡単に薙ぎ払えるだけの戦闘力を持っているため相手方に気に入ってもらえなければパートナーになるなど到底不可能なのだ。
そして極め付けに大抵の外生命体は見た目がグロい。
大きさも形もピンキリだが俺の知る限り九割五分の確率でヤバい系の捕食者の見た目をしている。
うちにいるアボさんもそうだ。
シルエットこそ人の形に近いが背丈は二メートル半ばを越えており、可愛いとは間違ってもいえない肉肉しいくピンク色の皮膚は爛れたように引きつりのっぺりとした顔の部分には目も鼻もない代わりに謎の感覚器官である黒い球体が埋まっている。
口、というか栄養を摂取するための穴は胸のあたりにあって中にはぞわぞわ蠢く細い触手、背中には皮膚のピンクより赤みの強い丸い肉のコブが虫の卵のようにびっちりと並んでいる。
女性でなくても悲鳴を上げて逃げ出すだろう。
俺だって出会ったときのアボさんが野良犬のようにぼろぼろになって行き倒れていなければ同情する間もなく逃げていた自信があった。
でもまあ行き倒れていた理由が空腹で、食料が精液で、人を襲おうと思えば簡単に襲えるだろうにそうしなかったことや顔の球体がアボガドっぽいからアボさんと名付けたら不服そうにしたことや一等気持ち悪く見えた背中のコブの一つ一つがとても敏感な性感帯だったことや食事のために口に出すより孕むわけでもない生殖器官に出される方が好きなことや栄養を摂取するためだけにある口でキスをねだってくるようになったことや、その他沢山のあれやこれやがあって俺はアボさんと仲良く一つ屋根の下で暮らしている。
目下の悩みは政府への定期レポートがアボさんの開発日記みたいになってしまっているところだ。
性事情を赤裸々に書いたレポートなんて読んでいる方も恥ずかしいだろうし、どうにか免除してもらえませんかね?

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