フワフワと何だか変な感じ。
目の前にいるのは確かに私のはずなのに、他人みたいに私の意思とは別に動いてる。
まるでもう一人私がいるみたいね。
そんな呑気なことを考えた。
おはよう。
もう一人の私(以下、彼女と呼ぶことにする)がそう挨拶すると、その場にいた数人の人たちが、おはよう、と返してくれる。
その人たちの顔には陰がかかっていて、私にわかるのは口元の動きだけ。
なのに何でだろう。
この空間がとても懐かしくて幸せ。
ボンヤリとした頭で私はそう思う。
まだ寝ぼけてるのか、と頬を摘ままれ、眠たげに目を細めていた彼女は顔をしかめた。
痛いよ、――。
彼女がそう言えば、
はは、和泉は朝が苦手だもんな。
…低血圧?
などと、みんなが口々に発言するけれど、ところどころモヤモヤと霧がかかったみたいに曖昧で、どうも何かが頭に引っかかる。
はて?と疑問符を浮かべていると、
そこが可愛いんだよ。
そんな台詞とともにギューッとと抱き締められてる彼女が見えて、私は恥ずかしさで顔が火照るのがわかった。
くそ、人前でイチャコラしやがって!
羨ましい?
そうだよちくしょー!
そのやり取りにみんなが笑う。
彼女はというと、ちょっぴり苦笑いだ。
だけどそんな中、一人だけ苦しそうに笑っている人がいることに気がついた。
――?
彼女がその子に声をかけて、どうしたの?と尋ねると、なんでもないよ、とその子は言う。
一瞬だけ、その子の顔がボンヤリと見えた気がしたそんな時、走馬灯のように、あらゆる場面が頭の中で移り変わる。
はっちゃん、雷蔵、三郎、兵助、勘ちゃん。
これはただの夢なんだろうか。
そうでなければ、一体何だと言うのだろう。
夢を見る回数を重ねれば重ねるほど、それはより鮮明になっていく。
『…不思議な夢ね。』
何だか少し切なくなった。
20111027