「なーなー、トキヤって音也と付き合ってるのか?」
「んぐっ!?」
「わ、大丈夫トキヤ?」


昼食に食べていたパンを喉に詰まらせ、げほげほと咳き込んでいると音也がそう背中を擦ってくれた。一方変なことを言い出した翔は悪気は全くないようにおにぎりを食べていて、レンはくすくすと笑っていた。今こうして食事に至るまで、様々なことがあった。私と翔とレンで昼食を食べていると音也がやって来て、一緒に食べると言い出した。聖川さんと四ノ宮さんはと聞くと、置いてきちゃったと笑っていた。呆れ半分になっていると、翔が一緒に食おうと言い出し、会話を交えながら昼食を食べている最中に先程の言葉を翔が言ったのだ。
一応、だ。私と音也は付き合っている。音也から告白されて、もちろん私は断った。けれど音也は引くこともなく、なぜそんなに私が好きなのかと問えばしっかり理由まで述べてきた。しつこいと思い、思い切って私がHAYATOだと告げれば音也は一層興味を持ったように目を輝かせ、交際を迫った。そんな勢いに勝てるはずもなく、私は渋々承諾したのだ。別に全面否定と言うほど嫌いではないけど、今まで恋愛感情というものをばっさり断ち切っていただけあって、こんな関係になったところで私と音也は特に変わったところはなかった。まあ一つあるとすれば、距離がやたら近くなったくらいだろう。


「大丈夫かトキヤ?」
「だっ…れのせいだと…」
「いや、そんなに反応されると思わなくて」


音也から渡されたペットボトルを口に含み、私が落ち着いた様子を確認すると少し驚いたように翔がそう言っていた。


「で、ホントのところはどうなんだよイッチー」
「しっ、知りませんよ!大体早乙女学園での恋愛は――」
「俺はトキヤのこと超好きだよ!」


にっこりと、屈託のない笑顔を浮かべた音也はそう言っていた。先程のようにパンを口に含んでいなかった私は唖然とし、翔とレンに関しては不意打ちをされたように固まったあと、二人して私の肩を掴み、吹き出して笑っていた。


「と、トキヤ!音也がトキヤのこと好きだってよ!」
「よかったじゃないかイッチー。ほら、返事は?」
「あっ」


ガヤガヤと囃し立てる二人。横目で音也を睨むと、ハッとしたような表情をし、小さく縮こまっていた。ああどうしよう、こんな状況でどう返したらいいのかわからない。二人は笑ってるし、一応の希望だった音也はしょんぼりと黙り込んでいる。ああもう面倒だ。そう思った瞬間、自分の中で何かが切れた。


「音也!ふざけるのも大概にしてほしいにゃあ!」
「っ、え!?」
「好きなんてこと、そんな簡単に口に、する、もの…じゃ」


ない。その言葉を口にする前にサーッと血の気が引いていく。声色、表情、仕草、先程の私はその全てがHAYATOそのものだった。なぜあんな窮地に追い込まれたときに自分の中でHAYATOが出てきてしまったのかはわからない、だけど確実にまずいと言うことはわかり顔、をあげると先程以上に呆気に取られている三人の顔があった。


「え………HAYATO……?」


翔は震える声でそう言っていて、レンに関しては冷たい視線を私に投げ掛けていた。どうしてこんなと気にバレてしまうんだろう、もう隠すこともできない。取り返しがつかない。酸素が足りていないのか、頭がぐらぐらし始め、覚悟を決めて真実を打ち明けようとしたとき、音也が口を開いた。


「翔!レン!トキヤがHAYATOみたいに話すときはホントに怒ってる証拠なんだよ!」


そう言っていた。私と目が合うと音也はウインクをし、再び二人と向き合って話をしている。何を話しているのかはわからないけれど、二人がうんうんと頷いたあと、私の元へ来てごめんなさいと口にした。也がフォローしてくれたんだ。そう思うと安心して力が抜け、はあと溜め息が出た。


「へへ、お疲れ様トキヤ」
「元はと言えばあなたが………でも、感謝はしてます」


元凶はそれこそ音也だけど、フォローを入れてくれたもの音也。一応感謝の念は見せようとそう言うと、だけど本当に好きだよと笑いながら言われ、頬に軽くキスをされた。そしてさっき以上に頭に血が登り、何も考えられなくなる。


「な……っ、なっにしてるんだにゃあ!!」
「トキヤ、口調!」


再び我に返ると、HAYATO?というざわついた声が聞こえた。そして再び笑っている音也を見て、とりあえず一発叩くと手を引いてその場を逃げ出すように走り出した。




111105
どうしてこうなった!


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