「っ、ぁ………」


シャーペンを握る手がガタガタと震える。ああ、なぜこんなことになってしまったんだろう、未だに惚けている頭で考えても、よく思い出すことはできなかった。事の発端は昨日のことだ。音也が嬉々として帰ってきたかと思えば、レンからもらった!と天使のような笑顔で差し出されたのは所謂バイブというもの。子供のような無邪気な笑顔のあとに見せられたそれはあまりにグロテスクであり、思わず視線を逸らした。なぜレンがそんなものを持ってるのか、そんなこのは問題じゃない。なぜこれを音也に渡したのか、というのが今一番の問題だ。そんな逸物をデスクに置かれ、なんとも言えない空気が流れる。じゃあ私は寝ますねと言い、ベッドに潜ろうとすると、やはり音也に止められた。悪い予想は的中し、笑顔の音也は思わぬことを口にした。


『明日、これ入れっぱなしで授業受けてよ』


もちろん何故ですかと反発はした。が、この前約束をすっぽかした罰だよと軽く避けられる。確かにあの時のことは申し訳ないと思っている、けれど、仕事が入っていたんだから仕方がなかった。そんないいわけが通用するわけもなく、その日は都合よく悪い冗談として受け取って寝た。しかし次の日、というか今日の朝。案の定私より早く起きていた音也によって半場無理矢理バイブを中に入れられ、じゃあ頑張ってねと言われた。動いたりはしない、けれど、なんとも言えない無機質な異物感には慣れず、そして今に至ると言ったところだ。休み時間もまともに動けず、机に突っ伏したままで過ごしていると、レンや翔に心配をされた。何食わぬ顔で大丈夫ですと答えるものの、平常心を保つのでいっぱいいっぱいだった。もちろん授業の内容も一切頭に入ってこず、とにかく教科書をじっと見つめていると、携帯がチカチカと光っていることに気づいた。もしかしてと思い開くと、音也からメールが来ていた。大丈夫?という、その程度の短いメール。


(誰のせいだと思ってるんですか……!!)


だいじょうぶじゃないです、切羽詰まっている自分の状況を伝えるべく、無変換のままのメールを送信すると、一分も経たぬ間に返事が来た。


『次の休み時間、行くね』


よかった。そう安堵し、携帯を閉じた瞬間、身体を動かした拍子にバイブも動いた。変な声が出そうになるものの、必死に声を押し殺して黙り込む。そんなとき、目線のあった翔が大丈夫かと目線で言ってくる。大丈夫ですよと笑って伝えると、早くこの時間が終わってほしい、そんなことばかり思っていた。



「トキヤーー!」
「おとや…………」
「おや、イッキじゃないか」
「あ、レン」


ふらふら足取りで音也のそばに近寄ると、近くを通りかかったレンが声をかけてきた。立ってるのも辛い私は、とにかく音也に掴まっていると、レンが何かを悟ったように笑っていた。ああそうか、今回の元凶はレンでしたね。


「イッキもなかなかひどいことするねぇ…」
「え、なんのこと?」


そう音也はわざとらしく笑うと、次の時間、トキヤは保健室にいるからねと連に短く伝え、私の手を引いた。どこにつれていかれるのかと思えば、本当に保健室だった。先生は、と思って見ると、そんな人物は見当たらなかった。


「先生はいないよ。プレート掛かってたもん」


鍵を閉めながら音也が楽しそうにいっていた。プレート、ということは、しばらく先生が留守ということ。それで保健室に連れてこられるということは、もう自分が何をされるかなんてわかりきっていた。だけどとにかく今は、抜いて楽になりたい、そんなことしか考えられなかった。


「おとや、もう、わたし…」
「………ごめんねトキヤ、辛かったよね」


もう約束破っちゃダメだよ、そう音也は優しく言うと、キスをしてきた。口腔をなぞられるように舌を入れられ、必死に舌を絡める。


「あ、ん、……ぁ…」
「トキヤちょーエロいよ…」


口を離され、呼吸を整えていると、音也が熱っぽい視線を向けながらそういった。制服のズボンを下着ごと下ろされ、下腹部が露にされる。普段なら恥ずかしくて死んでしまいそうになるけれど、今はそんなことを考える余裕さえもなかった。


「抜くから、痛いかもしれないけど我慢してね?」
「は、………はい…」


ぎゅっと目を瞑り、ベッドの柵を強く握る。後孔に入っていたものが抜かれていく感触はなんともいえないもので、声が漏れそうになるのを我慢するのに必死だった。


「っ、ん、………ひぁっ」
「ほい、抜けたー」


意識が遠退いていた中で、そんな音也の声が聞こえた。異物感はなくなったものの、今度は体が疼いていた。いつから自分はこんな、性欲の激しい人間になってしまったんだろう。そう思うものの、わかっているのかなんなのか、バイブをテーブルにおいて黙り込んでいる音也に近づき、顔を赤くして言った。


「あ、あの、おとや…
「なあに?」
「その………い、いかせて……くださ……い」


後になるにつれて小さくなる言葉を言う。本当は恥ずかしくて仕方ないけれど、今日だけだからと自分に言い聞かせる。すると音也はにこっと笑うと、私に再びキスをした。深いものではなく、あくまで軽いものを。


「よくできました。……まあ俺も、こんな状態でお預けされて平気な男じゃないし」


にこりと笑うと、音也はそういった。こんなことをされるのは初めてだったけれど、することは一通りした仲だから、今さらそんなことを言われてもという感じだった。


「ローション、ないから、一緒にしよ……?」


音也はそう笑うと、ズボンを下ろして自分のものを出した。そして私の正面にくると、お互いの性器を擦り合わせた。


「ふっ…ぁ、…ああ……っ」
「ほら、トキヤも…」


シーツを掴んでいた手を握られ、性器を掴まされた。先走りのぬるりとした感覚にぞくっとするものの、熱い感触に胸がドキドキと音を立てる。音也の手と重なり、思考が溶けていくような感覚に陥る。音也も気持ち良さそうな顔をしていて、少しだけ嬉しくなる。


「お、おとや……も、出る…」
「俺も……だから、いっしょに、ね……?」


音也はそう笑うと、私にキスをした。深くて甘い、脳が痺れていくようなキスをされ、音也と私、二人分の精液が手の中に吐き出された。




「金輪際、ああいったものは禁止ですからね!」
「えー…」

あの後、自分達が保健室にいると言うことを忘れていて、汚れたシーツやいろんなものの処理を焦って済ませた。そして寮に戻ると、私は真っ先に音也にそういった。もうあんな目に合うのは懲り懲りだと、そう思った。一方音也は別にいいじゃんと口を尖らせていた。謝る気が全くないそんな姿に飽きれ、私はため息混じりに言った。


「もう音也とはしません」

「ええ!?」


冗談ですけどね。




111028
分かち合う温もり


名無しさんお待たせしました
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