「なつき、なつき」


翔ちゃんのしっとりした金髪が揺れ、碧眼からぼろぼろと涙が流れていた。苦しいと、先程から訴える翔ちゃんを見ているのはとても心が痛んだ。でも僕が傍に居るだけで、すこしはましになると笑ってくれる翔ちゃんを見ていて、悪い気はしなかった。むしろ嬉しくなった。


「翔ちゃん、僕はここにいますから」
「く、るし…いたい…っ」


人形みたいに可愛い翔ちゃんが、プライドのかたまりみたいな翔ちゃんが、僕の前で形振り構わず痛い苦しいと泣いていた。僕も苦しくなった、だから、一生懸命翔ちゃんをぎゅってして、慰めてあげようと思った。翔ちゃんは泣きっぱなしなのに、抱きしめた翔ちゃんの体はいつもとどこも変わっていないように思えた。


「なつき……おれ、もう…や、だ……」
「翔ちゃん………」
「死にたく、ないよ………」


翔ちゃんのそんな弱音を聞いた瞬間に、ずきんと心が痛んだ。いつもかっこよくて、可愛くて、王子様みたいな翔ちゃん。そんな翔ちゃんが、今は僕の前で死にたくないと命乞いをしている。人の命は、なんて脆いものなんだろう。なんて残酷なものなんだろう。


「…………大丈夫だよ、翔ちゃん」


それは保証のない言葉。ぎゅっと優しく翔ちゃんを抱きしめると、涙を止めた翔ちゃんが僕の顔を見ていた。だから僕は翔ちゃんにとびきりの笑顔を見せて、言った。


「翔ちゃんは死んだりしません。一人になんて、させません」


翔ちゃんに寂しい思いをさせるくらいなら、僕は一緒に死ぬことを選ぶ。薫くんやさっちゃんなら、もっと他の道を選ぶかもしれない。でも僕には、それ以外の考えなんて思い当たらなかった。そんな僕の思いが通じたのか、翔ちゃんは一瞬固まると、にっこりと砂糖菓子みたいな笑顔を浮かべて、ありがとうと言っていた。ああ、翔ちゃんがやっと笑ってくれた。




▼朱海ルキさん、企画に参加していただきありがとうございました!音トキにするか迷ったのですが、那翔の方にさせていただきました。受けが精神的に弱っている姿…いいですよね!今年もストーカーしていただけるなんて光栄です///こちらこそ今年もよろしくお願い致します。





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