「う、………ぐすっ」
「お前のにーちゃん、そんな泣いてる面見せなかったぞ」
「………あ、あなたは、翔ちゃんの、こと、何も知らないくせに……っ」


ぼろぼろと涙を溢しながらそう言う、翔とそっくりの顔立ちの双子の弟の薫。なんでこんなに大泣きしてるのかといえば、つい先日那月と翔がくっついた。もちろんそれは俺たち二人だけに告発された事実であり、薫は青ざめながら冗談だよねと翔に聞くと、照れてはいるものの、幸せそうに微笑む兄の姿を見て悟ったのだろう。


「しょ……う、ちゃ……っ」
「いつまで泣いてんだよ」


隣に座ってそう言うと、薫は黙り込んでいた。しかし数秒後、鼻声で言う。


「砂月さんは、那月さんを翔ちゃんにとられて、悲しくないんですか……?」


そう言われ、思わず胸がズキンと痛む。悲しくないわけがない、今までずっと那月を辛い目に遭わせまいと肩代わりしてきたというのに、そんな俺の役目はあいつによって一瞬で崩れ去った。
だけど今の那月は一人でも生きていける、俺なんて必要ない。そうはわかっているけれど、やっぱり心のどこかで信じたくないという気持ちがある。

だから薫の気持ちがわからないこともない。今までずっと大切にしてた人が、自分の知らないところで、数ヵ月足らずで奪われてしまったのだから。


「なあおい、」
「なんです………」
「俺たち、似てるのかもな」


ぽん、と頭に手を乗せて言う。やっぱり翔と似たり寄ったりな髪質をしていて、あまりいい気にはならない。けれどどうしてか今だけならいいと、そう思えた。
一方薫はといえば、冗談も大概にしてくださいと言い、涙を拭って笑った顔を俺に向けた。

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