『歌えないアイドルを、私をプロデューサーは必要としてくれますか?』

 千早は振り返り、そう笑いながらいってきた。突然の質問に呆気を取られるも、当然だろうと笑顔を見せた。最もな話、ボーカルを命として生きている彼女がそんなことを冗談でも言うのが、俺は少し驚いた。

『ダメですよ、プロデューサー。歌えない私なんて、とっとと棄ててください』

 それはできないと笑うと、彼女はだめですからねと微笑んでいた。――ああでも、なんだって気づいてあげられなかったのだろう。彼女が拳を握りながら笑っていたことに。人は手を握りながら本当の笑顔というものは、見せられないものなのだ。あのときの俺は至らなくて、彼女の背負う荷物にも気付いてやれなくて、最低の、プロデューサーだった。



_千早の事情を知らなかったプロデューサーの浅はかすぎる行動と、それを後悔するプロデューサーさん。

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